不幸の連鎖


やがて865便は徐々に高度を下げ、雲の中へと入っていった。機体ががたがたと揺れ、コクピットで様子を見ていた小鳥はギュ、と目を瞑る。雲の下に出たジャンボ機は暗い雨の中、函館山の上空を旋回し、函館空港へ向かった。すると、雲が薄れてクリアになったコクピットの視界に、函館の夜景が飛び込んできた。
「空港だ!」
コナンは前方にまばゆいばかりに輝く空港の光を見つけた。赤や白、黄色の光が真っすぐに伸びた滑走路が見える。
『865便、フラップを一に!』
島岡の指示を聞いた安室は、左にあるフラップレバーを一段階引いた。すると、飛行機の主翼の後方から三枚の板がスライドして出てきた。
『フラップを五に!』
フラップレバーをもう一段階引くと、フラップの角度が五度に下がる。
『フラップを十に!』
稲妻が走って雷鳴が轟く中、フラップの角度がさらに下がっていく。
『車輪を下して、フラップを二十に!』
キッドが目の前のギアレバーを下げ、安室はフラップレバーをさらに引いた。収納庫が4開いて車輪が下り、さらにフラップが下がる。自動操縦装置とILSによって着陸態勢に入った飛行機はぐんぐん滑走路に近づいていった。コクピットの窓からは滑走路を四角に囲むライトが見える。するとその時――突然、轟音と共に窓の向こうから強烈な閃光が放たれた。
「うわっ!」
「きゃあ!」
ドンッという鈍い衝撃と共に、目の前の計器版に赤やオレンジの光が瞬いて、警報音が鳴り響く。四人が目を開けると、目の前のディスプレイや頭上のパネルのライトが全て消えていた。
「何!?」
「雷だ!雷が落ちたんだ!」
安室はすぐに無線に呼び掛けた。
「こちら865便!雷が落ちて画面がみんな消えてしまった!」
『落ち着け!グレアシールドの端の白いつまみを回すんだ!』
暗闇の中でキッドはディスプレイの上部にあるパネルの白いつまみを回した。すると、消えていた画面やライトが一斉に点いて、コクピットの中が明るくなった。
「点いた…!」
小鳥がほっと胸を撫でおろすと、安室が「まだだ!」とパネルを指さした。
「オートパイロットが点いてない!!」
『なんだって!?着陸中止だ!出力を上げて操縦桿を引くんだ!』
安室は素早くスラストレバーを両手で前方へ押す。後方で四機のエンジンが咆哮を上げ、キッドが操縦桿を引くと、スピードを上げた機体が上昇し始めた。
『よし!車輪を上げろ!』
安室はギアレバーを上げた。再び車輪が収納されて収納扉が閉じる。
「上げました!」
『よし!そのまま上昇!』
その時、横から強い突風が吹いて機体が煽られた。機内に衝撃が走り、ジャンボ機の機体が大きく傾いていく――。
『いかん!風に流されている!右に旋回だ、ターンライト!!』
管制塔の島岡は、傾いたジャンボ機をみて叫んだ。滑走路を逸れたジャンボ機が右に旋回して、ターミナルビルにク買っていく。
『ターミナルビルに突っ込むぞ!機種を上げろーー!!』
「うぐぐ……っ!」
キッドは加速Gに耐えながら、渾身の力を振り絞って操縦桿を引いた。ジャンボ機はギリギリで上昇し、屋上のフェンスに胴体をこすりながらターミナルビルを超えた。が、その先にはさらに高い管制塔がある。
「ま、まずい!」
管制塔の島岡たちは、突っ込んでくるジャンボ機に呆然と立ち尽くした。エンジンの轟音と共に目の前に巨大なジャンボ機の胴体が迫り、窓がビリビリと音を立てて震えたかと思うと、第二エンジンが管制塔のてっぺんを直撃して、激しい衝撃が襲った。ジャンボ機から外れ落ちた第二エンジンが火を噴きながら落下し、駐車場に待機していた作業者が吹き飛んだ。さらに飛ばされた車がタンクローリーに激突して爆発を起こし、燃料を給油していた周りの飛行機が吹っ飛んで、破片が滑走路に飛び散っていく――。
第二エンジンを失ったジャンボ機は煙を上げながら上昇していき、キッドはコクピットの左の窓から激しい炎と黒煙が巻き上がる空港を見下ろした。
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