もう一度最初から
「空港は?管制塔は大丈夫なのか!?」
血相を変えたコナンが声を上げると、無線から『865便、聞こえるか!?』と島岡の声が聞こえてきた。
「聞こえます!被害状況は?」
『タワー内の人間は皆無事だが、滑走路はすぐに使えなくなった。そちらはどうだ?』
キッドは中央のディスプレイをチェックした。第二エンジン関連の警告が様々に出ている。
「第二エンジンが脱落したようだ」
『大丈夫、残りの三基でも十分着陸できる。それよりバランスを…』
「バランスはとれている。当て舵を取って、第三スロットルを絞った」
『よし、今の高度と速度は?』
「三千フィート、二百ノット」
キッドは操縦桿の後ろのボタンを押しながら答えた。
『フラップを五にして、水平飛行に移れ』
安室はフラップレバーを五に戻した。フラップの角度が変わり、キッドが操縦桿をゆっくりと押し戻すと、正面のディスプレイに表示された水平儀が水平を示した。
「水平になった」
『機首を百八十度の方向に向け、四千五百まで上昇してくれ』
「了解」
キッドが正面のディスプレイを見ながら操縦桿を動かす。
「その後は旋回して待機か?」
窓から下を見ていた安室は「ええ」と振り向いた。
「オーパイさえ復活して、滑走路が元の状態に戻れば再びILSで着陸は可能ですから」
上昇するジャンボ機の第二エンジンが外れ落ちた個所には大きな穴が開いていた。そして、そこから液体が大量に流れ出て居るのに、誰も気付いていなかった――。
安室は、コクピットの床にへたり込んでいる小鳥を振り返り、困ったように笑う。
「小鳥さん、怖いなら無理にここに居なくてもキャビンに戻っていて良いんですよ?」
小鳥は俯いたまま首を横に振る。
「…怖いよ、怖いですけど…。でも、傍に居たいから、ここに居ます。何も出来ないかも知れないけど、隣で見守らせてください」
震える足を叱咤して立ち上がる彼女の瞳に迷いはなく、安室は頷いて笑った。
四千五百フィートまで上昇したジャンボ機は、上空で旋回し、滑走路の準備が整うのを待っていた。すると、突然コクピットのドアが開いて子供たちが駆け込んできた。
「コナンくん、大変!」
「大変です!」
「エンジンが一つ落ちちゃった!」
コナンが「わかってる」と声を掛け、副操縦士席の安室は彼らを振り返った。
「大丈夫ですよ。残った三つのエンジンでも十分安全に着陸できますから。燃料だってまだ沢山――」
中央のディスプレイを見た安室は「え!?」と小さく声を上げた。操縦桿を握っていたキッドが顔を向ける。
「どうした?」
「燃料が殆んどなくなってる…!」
「何!?」
キッドとコナンも驚いてディスプレイを見た。画面の隅に表示された燃料が三千六百ポンドと残りわずかになっている。
「燃料が無くなった――!?」
子供たちが叫ぶと、進藤が入ってきて不安そうに声を掛ける。
「もしかして、エンジンが落ちてしまったから!?」
コナンは「いや」と首を横に振った。
「普通、四つのエンジンには、それぞれ別のタンクから燃料が補給されるから、たとえ一基外れても他のタンクに影響はないハズ…」
コナンが説明をする間に、安室は中央下段のディスプレイを表示させ、顔を曇らせる。
「…クロスフィード・バルブが開いてる…!」
「な、なんですか?クロス…なんとかって」
小鳥が尋ねると、安室はシートベルトをを外して腰を浮かせ、頭上のパネルスイッチをオフにした。
「クロスフィード・バルブです。このスイッチを押すと燃料タンクを仕切っていたバルブが開いてひとつながりになってしまうんだ。それで落ちた第二エンジンの穴から、他のタンクに入っていた燃料も流れていった…と考えるのが妥当でしょうね」
「いったいどうして…」
不思議そうに思っているコナンを見た子供たちは「あっ!」と声を上げた。
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