闇を照らす光
「コナンくん、室蘭の方向は?」
安室の問いかけに、コナンは地図をめくり、航空図のページを開いた。
「あった!ちょうど函館から札幌へ向かう航空路が室蘭の近くを通ってる!方位は023度だ!」
「023ですね」
安室は右手を伸ばし、ディスプレイの上部にあるモード・コントロールパネルのつまみを回して023にセットした。
「山越えになる。高度は五千以上だ」
キッドは「ラジャー」と答えると、進藤を振り返った。
「すみません。乗客には新千歳に向かうと言ってください。それと、二階席の全員を下に移してください。乗客が操縦してると知ったら、パニックになりかねないでしょう?君たちもお願いできるかな?」
上手く子供たちを誘導してキャビンに戻らせる。コクピットには再び、コナン、キッド、安室、小鳥の四人が残った。
室蘭湾をまたぐ白鳥大橋からほど近い丘の上にある祝津公園の展望台に、目暮十三警部、白鳥任三郎警部、高木渉巡査部長が立っていた。一台の車が猛スピードで橋を渡って来るのが見え、驚いているとそのすぐ後ろを覆面パトカーがけたたましくサイレンを鳴らしながら追っていく。
「凄いパトカーの数ですね」
「相当な凶悪犯を追っているようなな」
高木と白鳥がパトカーを目で追うと、目暮が「よし!」と頷いた。
「わしらも行ってみよう!」
コクピットでは、機長席に座った安室が真剣な面持ちで操縦桿を握る。
「そろそろ室蘭だ。二千フィートまで高度を下げるぞ」
素の声に戻ったキッドが指示すると、安室は操縦桿をゆっくりと前に押し出した。すると、機体は雲海を抜け、コクピットの全面窓に真っ暗な海が映った。その先に室蘭半島の明かりが見える。明かりがどんどん近づいてきて、ライトアップした測量山や製油所、白鳥大橋が見えてきた。
「室蘭港だ!崎守埠頭はもっと左…白鳥大橋の向こう…」
コナンは言いかけて言葉を止める。小鳥が不安そうな顔で安室を見た。
「安室さん…暗くて、何も見えないですよ…?」
「くそっ…あれじゃ着陸は無理だ!」
クッと歯噛みする安室の後ろで、赤外線双眼鏡を使って室蘭を見ていたキッドは笑う。そして頭上のスイッチを操作し始めた。
「いや、まだ方法はある」
「…!あなた、まさか!」
キッドが押したのは与圧を下げるスイッチだった。窓の外を見ていた小鳥は、彼の行動をいち早く理解し眉を寄せた。
「俺は先に降りる、後は任せたぜ。探偵諸君」
「おい待てキッド!」
「待って新一くん!…大丈夫だから」
追いかけようとするコナンを止めた小鳥の表情にはわずかに笑みが浮かんでいた。暫くすると、キッドの白い翼が前方の窓に映る。そしてそれを追うパトカーの明かりが、彼の行動の真意を三人に伝えた。
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