悲しい真実


「たった今鑑定の結果がでた。ヘアブラシに付いていた毛髪は伴場さんのものと断定されたよ…。」
「と、言うことはやはり…彼女に探偵として雇われていた僕を、愛人だと勘違いした貴方が嫉妬心から殺意が芽生え…彼女がこの店に車で戻ってくるのを駐車場で待ち伏せ、車に押し込んで焼殺したと考えざるを得ませんね…」
「え、でも…」
小鳥が安室の推理に対する矛盾点を口にしようとした時、背後から小五郎の間抜けな声が聞こえた。まさかこれは…と口を噤む。眠りの小五郎、推理ショーの始まりだ。
「伴場、お前本当にこの雨の中署まで行くつもりか?」
「しゃーねーだろ!こーなったら警察で無実なのを分かってもらうしか…」
「そうか…だったらお前は、犯人じゃねぇよ!」
机の下に身を隠したコナンが小五郎の声でしゃべり始める。流石高校生探偵、それからの推理は圧巻だった。まず、小五郎…コナンは付け爪から採取されたDNAの謎を解き、伴場の靴裏についたケーキのクリームから、彼が店から出ていない事を証明した。そして二人の過去から、伴場と初音が血を分けた双子である――と推理したのだ。
つまり彼女は、自分と伴場が双子であり結婚を許されない事に絶望し、自ら命を経った。これが事件の真相だ。

重い空気の残る現場にいたたまれなくなり、小鳥は雨の降り続く外へと出る。
どんどん体温を奪われていくのを知りながら黒に染まった空を眺めた。
「風邪を、引きますよ。」
カラン、と音がして扉が開く。声の主は安室透だった。
「…ねぇ、安室さん。どうしてあの時嘘をついたんですか?貴方…彼女が自殺って分かってましたよね?それなのに、まるでおじさまに事件を解かせるように…」
「小鳥さん。」
安室の細い指先がそっと彼女の唇に触れる。
「その謎はいずれまた。ご内密にお願いしますよ、なにせ…貴方とは長い付き合いになりそうですしね。」
にこり、と微笑む安室の顔が小鳥の背筋を凍らせた。

彼の言葉の意味を、小鳥はすぐに理解することになる。何故なら安室透は、毛利小五郎の弟子として再び彼女の前に現れたのだから――…。
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