惨劇
「小鳥!!」
「佐藤さん!!」
小鳥の悲鳴を聞きつけたコナン、安室、高木が化粧室に入ると、水浸しになった床で小鳥と佐藤が重なるように倒れていた。
「小鳥さん、小鳥!大丈夫ですか!?」
安室は小鳥の両肩を掴んで身体を起こした。外傷は銃弾の掠めた頬だけのようで内心ほっとする。
「小鳥のねーちゃんは気を失ってるだけだよ。重傷なのは…」
コナンは佐藤を見た。
「佐藤さん!佐藤さん、しっかりしてください!」
高木に抱きかかえられた佐藤の両肩からは大量に出血していた。懸命に声を掛けていると、すぐに目暮、白鳥、小田切と小五郎が駆け付ける。
「これは…!!」
「目暮、救急車だ!白鳥、ホテルの全ての出入り口を封鎖しろ!」
小田切の指示で、白鳥はすぐに化粧室を出、目暮は携帯で救急車を呼ぶ。立ち上がったコナンは化粧台の下の扉が開きっぱなしになっているのに気が付いた。中には逆さになったバケツや備品が置いてある。そして個室の前にはサイレンサー付きの拳銃が転がっていた。
(弾は空か。9mのオートマチック…)
現職刑事が射殺された例の事件に使われた拳銃と同じだった事から、事件の犯人は同一人物であることが明らかになる。しかし、コナンには疑問が残った。停電で真っ暗な中、犯人はどうやって佐藤を狙って撃ったのか――
「…コナンくん、これ…」
小鳥を小五郎に預けた安室はポケットから取り出したハンカチを使って、隅に転がっていた懐中電灯を手に取った。
「なんで懐中電灯が…」
「元々洗面台にあったのか――もしくは犯人が用意したものかもしれないね」
直ぐに駆け付けた救急車に乗せられて、佐藤と小鳥は病院へ運ばれた。安室も同行したいのは山々だったが、一応会場に来ていた全員が容疑者の為会場に残る。
「子供を除く全員の硝煙反応を調べろ!例外はない!私を含む警官も一人残らずだ!」
15階の宴会場に居た人たちはロビーに集められ、小田切が刑事たちに指示した。
「勿論、ここに居る馬鹿者もだ!!」
と、指をさされた敏也は、サングラスを下げて不敵な笑みを浮かべた。
「あの人、まだ居たんだ…。あれ?」
「どうした、コナンくん」
「うん…居ないんだ。さっきホテルに居たはずの人が。新郎新婦さんを不服そうに見てた普段着の男の人と、敏也さんが出ていく前、扉の傍に立ってた髪の毛の長い女の人」
ロビーを見渡すコナンに、安室は「ああ」と相槌を打った。
「その二人なら僕も見たけど…もう帰ったんじゃないか?なんにせよ、今この場に居なければ犯人じゃないと思うよ」
安室はコナンへと笑顔を向ける。が、コナンはその裏に隠された圧倒的な憎悪に背筋を震わせた。
コナンが安室や白鳥たちと米花薬師野病院に駆けつけると、佐藤は緊急手術を受けていた。手術室の前では、うつむいた目暮が歩き回っている。
「目暮警部、佐藤さんの容体は?」
白鳥が尋ねると、目暮は険しい顔を上げた。
「弾の一つが心臓近くで止まっている。助かるかどうかは五分五分だそうだ…」
「えっ…」
白鳥と高木は短い声を上げた。二人の背後で八重が尋ねる。
「警部さん、小鳥は…?」
「ああ、幸い外傷は頬の傷だけで済んだよ。まだ意識は戻らないが…病室はこの奥だ」
目暮が指さすと、八重は小走りで病室へと向かったが、コナンと安室は留まった。
(小鳥さんは大丈夫でしょうが…あの懐中電灯が気になりますね…)
化粧室に駆けつけたとき、つけっぱなしの懐中電灯が床に落ちていた。もしかして――安室が何かに気付いた時、目暮が「白鳥君」と声を掛けた。
「捜査の方は?」
「全員の硝煙反応を調べましたが…出ませんでした」
「出ない!?」
「犯人は入り口を封鎖する前に、逃走したものと思われます」
「拳銃から指紋は?」
目暮が尋ねると、高木は残念そうに肩を竦めた。
「それも出ませんでした…」
安室は難しい顔をしながら「コナンくん」と声を掛けた。
「君は犯人が既に逃走していたと思うかい?」
「いや、思わないよ。あの会場に居たはずだ…でも何故硝煙反応が出ない…。犯人はどうやって…」
「大変です!!小鳥が!!」
コナンが言いかけたとき、八重が病棟に続く扉から出てきた。
「小鳥さんがどうしました!?」
「意識が戻ったけど、様子がおかしいんです!」
「…っ、小鳥…!」
安室はコナンと共に病室まで駆け出した――。
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