覚悟
「妹の環さんには、男は事件とは無関係だったと伝えて……自殺として処理されたよ」
目暮は友成警部の調べた事件の話を終え一息着く。先程自販機で購入した缶コーヒーは既に冷たくなっていた。
「ところで、友成警部には真と言う一人息子がいるんだが……」
と、目暮が切り出すと、白鳥は友成真の写真をテーブルに置いた。
「おや、この男の人、パーティ会場に来ていましたよ」
その写真に写っていたのは、安室がパーティ会場で見かけた男だった。パーティに似つかわしくない普段着で、しかめっ面で新郎新婦を睨んでいたのでよく覚えている。
「この男が何か?」
「ああ…友成警部は発作が起きた時、自分の身よりも捜査を優先したんだが、息子さんは何故救急車を呼ばなかったのかと憤ってな……。父を殺したのはあなた達だとすごい剣幕で3人の刑事を葬式の席から追い出したんだよ」
一向に見えてこない事件の真相に、小五郎は頭を抱える。
「犯人は左利きだってのは分かってんだけどな……」
そう呟くと、背後で衣擦れの音が聞こえ安室は振り返る。白鳥は写真を片付けながらハッとして手を止めた。
「そ、そう言えば友成真も左利きだ……!それに彼は犯行現場付近でも目撃されている…!」
「よし!友成真を指名手配だ!」
目暮に指示された白鳥は、病室を走って出ていった。違和感にコナンが考え込んでいると、聞きなれた声が病室に響く。
「仁野保先生の頸動脈はどう切られていましたか?」
振り返ると、安室に支えられた小鳥が身を起こしている。どうやら途中から目を覚まして話を聞いていたようだ。
「ど、どうって……右側を上から斜め下へまっすぐだよ」
「では、その事件が他殺なら、犯人は左利きかもしれません。遺書が自筆でなくワープロと言うのも妙ですし…」
「なんでそんなこと分かるんだ?」
怪訝そうに小五郎が突っ込むと、
「返り血を浴びない為……」
安室が小鳥より先に答えた。そしてポケットから左手でペンを取り出すと、小五郎の背後から首に左手を回し、メスに見立てたペンで首の右側を上から斜め下にスパッと切る真似をした。
「そうするには、左手で無いと右の頸動脈を切れない……ですよね、小鳥さん」
「はい、その通りです」
目暮は一連の動作を見て「なるほど」と腕を組む。
「しかし、仁野保氏と友成真は繋がりはない……。もし仁野氏が他殺だとすれば別に左利きの犯人がいるはずだ……」
「敏也さんも左利きだよ。左手でマッチ擦ってたもん」
パーティ会場でタバコを吸う敏也を思い浮かべながらコナンがそう言うと、安室は「もう一人います」と渋い顔をした。
「父親の小田切警視長……彼も、左利きです」
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