地下の攻防


コナン、安室、小鳥は、事件のあった米花サンプラザホテルに来ていた。エレベーターで15階にあがりロビーを歩いていく。
「あの、安室さん。ホテルに残っていた人が全員犯人じゃないってどうしてわかったんですか?」
「ああ、硝煙反応ですよ。拳銃を撃つと、衝撃で舞った煙が必ず手首に掛かるんです。だから犯人の手から必ず検出されるハズなんですが、ホテルに居た人の誰からも検出されなかったんです。ただ僕は、『誰も犯人じゃない』でなく『どうにかして硝煙反応を消した』と思っていますけどね」
「へぇ〜…安室さんって、探偵さんと言うより刑事さんみたいですね」
深い意味もなく彼女の口から出た言葉だが、安室とコナンは内心ギクリとする。
「でもそっか、じゃあ手袋と煙を跳ね返しちゃえるものがあれば――…」
うーん、と首を捻りながら小鳥は考えた。彼女の言葉を復唱し、安室はハッと目を見開く。考え付いた答えはコナンも同じなようで、二人は顔を見合わせた。
「…私、あの時…って安室さん、コナンくん!」
突然走り出した二人は、クロークに戻り、傘置き場に置いてあったビニール傘の事を女性スタッフに尋ねる。
「え?あの傘、ぼうやのだったの?」
「うん!今どこにあるか知ってる?」
「ごめんなさい、穴が開いてたしお姉さん捨てちゃった」
女性スタッフが申し訳なさそうな顔をし、安室も「そりゃそうですよね…」と肩を落とす。すると、コナンの目の前に一本の傘が差しだされた。
「って言うのはウソ、ちゃんととってあるわよ!」
ウフッと得意気に笑ってウインクをする女性スタッフにコナンは(おいおい)と心の中で突っ込んだ。ビニール傘を受け取ったコナンは、安室たちと共に傘立ての前に戻り、傘を広げる。すると小鳥が目に見えて怯え、安室の服を掴んだ。
「小鳥さん、大丈夫ですか?…これを、見たことがあるんですね?」
「――ッ、あの時、…傘の、隙間から…っ」
「やっぱり…これでパーティーに来ていた全員が容疑者だ!」

「ねえ、コナンくん?次はどこへ行くの?」
米花サンプラザホテルを後にしたコナンたちは、繁華街に来ていた。事件には関係の無さそうな場所に、小鳥は首を傾げる。
「うん…ライブハウスなんだけど…っと、ここだ」
通りから一歩入った所で立ち止まると、地下に降りる階段の上に『O-zy』と言う看板が掲げられているのが見える。重い扉を開けると、ギターやドラムの爆音が飛び込んできた。
「…あれは、小田切敏也さん…」
狭い会場には観客がひしめき、ステージではバンドメンバーが引き出す爆音をバックに小田切敏也が歌っている。コナンたちは低い階段を上がり、会場後方にある柵に手を掛けてステージを見つめた。会場内ではダイブする者まで現れ、最高潮に盛り上がっている。
そん中、会場の後ろで壁にもたれてステージを冷ややかに見ている女性が居た。
(仁野環――…)
彼女の冷ややかな視線は、ステージで歌う敏也に注がれている。
「どうやら、彼女がパーティー会場に居たのは彼を尾行するためだったようですね」
「うん、若しかしたら仁野先生の死に関与してるんじゃないかって疑ってるのかも」
コナンと安室が小さな声で話していると、ステージに立つ敏也が持っていたピックをギターの弦に強く押し付けた。ギュイーーーンと不快な音が会場に響き、弦がブチッと切れる。
「テメェ!!なんで毎日毎日俺を付け回すんだよ!!」
敏也がマイクに向かって怒鳴った。観客たちは敏也の視線の先を辿るように会場後方を一斉に振り返る。
「…気になる?」
視線の先に立っていた環が顔を上げ、ステージに立つ敏也を真っすぐに見た。
「何?」
敏也が眉を潜めると、環はすっと右腕を伸ばして敏也を指さした。
「あんたが射殺した二人の刑事の代わりに、私があんたの殺人の証拠を見つけてやる!」
環はそれだけ言うと、扉に向かった。扉を開ける際にステージを振り返り、意味ありげな笑みを浮かべたかと思うと、静まり返った会場を後にした。
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