推理と真実


「こっちだ!」
岩山の中を透明のチューブで一気に降りたコナンは、出口ではなく『関係者以外立入禁止』と掛かれた洞窟のような通路へと向かった。
「その出口はヤツが待ち伏せしてる!」
張られたロープをくぐり、二つに分かれていた道の左側を進んだ。まっすぐに伸びた薄暗い通路をひたすら走ると、やがて階段に突き当たり、三人は階段を駆け上がっていった。曲がりくねった階段を上り詰めたところに出口が見えた。
「ここは…」
出口を抜けて岩山の中腹らしき場所に出た小鳥は足を止めた。海の向こうにさっき居た岩山が見える。
「『冒険と開拓の島』の本島だよ。あの小島から海の下をくぐってきたんだ」
「そうなの…」
三人が立っているのは、火山に見立てたアトラクションだった。山頂の火口からは炎と煙が噴き出し、山頂から流れる川は赤くライトアップされてまるでマグマが流れているようだった。その川を時折無人の円形ボートが流れていく。
「行きましょう!」
安室が走り出し、コナンと小鳥も後を追った。
すると、甲高い音と共にコナンの足元と小鳥の頭の近くで火花が散った。銃弾だ。三人は咄嗟にその場の岩陰に隠れた。
「まだ話の途中だったな」
コナンが岩陰から覗くと、銃を構えた風戸が阪を上ってきた。ボートで追ってきたのだ。風戸は岩の手前で足を止め、コナンたちが隠れた岩に銃を向けた。
「困るんだよ、君たちにあのトリックを解かれちゃぁ。私も佐藤刑事を撃った容疑者の一人になってしまうからね」
コナンは岩陰に座り込んだ小鳥にじっとしているように手で合図すると、ズボンのポケットから腕時計を取り出した。
「(8時54分――…)もし小鳥の目撃証言があっても、硝煙反応が出なければとぼけられるって訳か?」
「そういう事だ」
風戸は軽く目を閉じると、口の端を持ち上げた。
「桜庭くんに見られたのは一瞬だからね。だが、危険な芽は摘んでおこうってワケさ…。さあ聞こうか、君の推理があっているかどうか」
「いいとも」
コナンは冷ややかに微笑んだ。
「まずアンタは、ホテルの15階を停電にした後、手術用の手袋をはめ、傘立てに予め用意した傘を持ち女子トイレに行った。その傘の先端は前もって穴をあけて置き、そこから銃を突き出して撃ったんだ」
事件後、コナンたちが再びホテルに行って置忘れの傘を開くと、先端に穴が開いていた。それを見たとき、傘をつかったトリックが分かったのだ。
「つまり、傘が火薬と粉の煙から貴方を守ったというわけですよ。だからあの時貴方から硝煙反応は出なかった。手袋は恐らく男子トイレから流したんですよね?」
「正解だよ…やはり死んでもらうしかないようだ」
風戸は一歩一歩近づいてきた。空になった弾倉を拳銃から抜き、新たな弾倉を装填する。どうすればいいーー…安室は後ろ手に小鳥を庇いながら必死に考えた。自分の力なら風戸をねじ伏せる事は可能だが、リーチが違いすぎる。風戸を捉える間に小鳥やコナンが撃たれる可能性の方が高い。
その時、安室の耳に川の流れる音が聞こえてきた。隠れている岩のすぐそばの数メートル下を川が流れているのだ。無人の円形ボートが流れてくるのが見える。あれだ――安室が思いついた時小鳥が「あの」と声を掛けてきた。
「…どうして?」
「え?」
「どうしてこんなに私のことを守ってくれるんですか?いくら恋人でも、自分の命を危険に晒してまで…」
不安そうにする小鳥を見て安室は少し驚くも、フッと笑って彼女の手を掴んだ。
「好きだからですよ…」
「え…?」
「大好きで、大切だからです。この地球上の誰よりも……!!」
振り返った安室の顔が、記憶の中の『彼』と重なる。
「跳びますよ!」
風戸が撃った銃弾が足元で跳ねると同時に、三人は川に飛び降りた。タイミング良く流れてきた円形ボートに着地する。
「息を目一杯吸って!早く!」
風戸がボートに向かって銃弾を撃ち、安室は小鳥を連れて川の中に飛び込んだ。そして素早くボートの下に潜り込み銃弾をかわす。川を下るボートはやがて洞窟の中へ入っていき、三人は「ぷはっ」と水面から顔を出した。
ボートが洞窟に入り、銃で狙えなくなった風戸は「クソッ!」と悔しそうに拳銃を下すと、坂の方へ走り出した。
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