未来へ
「桜庭さん、本当に良いの?」
「はい、両親の理解は得ています。元々、父に認められたくて入った学部なので…もう、十分なんです。だから、お願いします」
「…そう。残念だけど、貴女が自分で決めたことだものね。分かったわ、受け取ります」
東都大学の学長は少し残念そうな素振りを見せるが、彼女の表情に諦めたように頷き一枚の封書を受け取った。そこには桜庭小鳥の字で「退学届」と記載されていた――。
「た、退学届けを出した!?」
「う…うん、駄目でした?」
夜、ソファで話を聞いた降谷は驚いて珈琲を零しそうになる。向かいに座る小鳥は心配そうに眉を下げた。
「いや、小鳥の人生だから駄目じゃないが…どうして急に?」
「やりたい事が変わったの。零さんの助手をして、犯罪に対してもっと真剣に向き合いたいと思った」
小鳥はバックの中から一枚のプリントを取り出して机の上に置いた。降谷はそれを手に取り、暫くして「ふは」と笑いだす。
「司法試験の予備試験か。小鳥らしい向き合い方だな」
「うん、私…目指します、検事を」
「なら俺は全力でサポートする。がんばれ、小鳥」
席を立つと小鳥の隣に移動し、降谷は彼女を抱きしめる。暖かいぬくもりと降谷の匂いに、小鳥は心地よさそうに身を委ねた。
「そう言えば小鳥、四条さんは目指してるものとかあるのか?」
「八重ですか?あの子は警察官になりたいって言ってましたけど…適当そうに見えて案外優秀ですからね。頭も良いし勘も良いし…風見さんたちの護衛だって気づいてますよ」
「あいつら…今度説教だな」
言いつつ、拳で小鳥の頭をぐりぐりとすれば、彼女は「いたたたた」と情けない声を上げながら足をばたつかせた。
「そ、そう言えば零さん、明日なんですけど…」
「ん?ミステリートレインか?」
「はい…コナンくんからの情報なんですが、恐らく怪盗キッドも変装して同乗してくるんじゃないかと…」
ぴくり、と降谷の眉が動く。力が緩くなって、小鳥はするりと彼の腕から抜け出し向き直った。
「なんだか鈴木財閥の相談役がですね…」
事のあらましを話すと、降谷はやれやれと言ったようにため息をつく。そして小鳥の頬へと手を伸ばし指先で撫でた。
「俺の小鳥に触れさせるわけにはいかないからな…キッドの変装にも気を配っておかないと」
「零さんの頭パンクしちゃいそう…キッドに関してはコナンくん優秀なので任せておけば大丈夫だとは思いますけどね。零さん、お仕事集中した方が組織の人に怪しまれなくて済むわけだし…」
服の中に侵入してきた彼の右手をぺし、と叩いて小鳥はそう続ける。降谷は残念そうな顔をした後渋々手を離した。小鳥はクス、と笑って彼の頬へキスをする。
「終わったらいくらでも相手しますから、もう少し我慢してください…ね?」
頬を赤らめてそう言う彼女に、降谷は下半身が熱くなるのを感じ思わず頭を抑えた。
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