密室の現場
二つの扉が閉まった後、今度はE室の呼び鈴が鳴る。車掌が向かうと「ちょっと!どーにかしてくださらない!?」と、出波がイラついた様子で顔を突き出した。
「どうにかとは?」
「音よ音!!部屋の中で妙な音がしてるのよ!」
「な、何も聞こえませんが…」
「さっきはしてたのよ!」
その時丁度、ピピ・・・ピピ・・・と、部屋の中から電子音が聞こえて来た。
「ほら、この音聞こえるでしょう?」
「はい…多分、誰かの忘れた携帯電話か何かだと思いますが…」
部屋の中に入ろうとした車掌を、出波が手で押し戻す。
「ちょっと入らないでよ!!自分で探すから!」
「はあ…」
「それより私が言いたいのは…何でその携帯を発車前に見つけていないのかって事よ!!この部屋ちゃんと掃除したの!?」
「あのーー何かあったんですか?」
出波の金切り声を聞きつけ、今度はC室から安藤が顔を出す。そこへ丁度、園子が、蘭や世良、少年探偵団と小鳥やって来た。園子はトリックの為部屋を代わった室橋の居るはずのB室の扉をノックする。
「ちょっとおじさん!もうトリックばれちゃったわよ!出てきて説明してよ!」
扉を勢いよく叩くが、室橋からの返事は無い。
「ちょっと〜まさかうちらの部屋で寝てるんじゃ…」
園子がぼやきながら扉を開けようとする。しかし途中でガッと止まってしまった。どうやらチェーンロックがかかっているらしい。部屋の中を覗き込むと、室橋が椅子に寄りかかり、顎を上げて眠り込んでいるのが見えた。
「おじさーん!!寝てないでチェーンロック外してよ!」
「どうしたの?」
わめく園子に小鳥が声を掛ける。
「あの被害者役のおじさんがソファーで転寝してるのよ。こめかみから血を流して…まるで死んでるみたいにね!」
「え?」
園子答えを聞いたコナンと世良が、同時に顔色を変えた。
「まあ、どうせまた推理クイズのネタだろうけど…」
「ちょっとどいて!」
世良とコナンは、チェーンロックの隙間から様子を伺い、驚きに目を見開いた。部屋の中から硝煙の臭いがするのだ。推理クイズだったら、こんな臭いがするはずがない。
「扉を破ろう!!」
コナンが言い、二人はドアのへりに両手を掛けた。「いっせーの…」で、思い切り手前に引いてチェーンロックを壊すと部屋の中に突入した。
「すっげー!」
「また推理クイズですか?」
元太と光彦が、のんきな声を上げる。世良が目を見開いたまま動かない男の脈を確認して呟いた。
「いや…本当に死んでるよ。しかもこれは密室殺人だ」
「密室殺人!?」
目の前にある遺体が本物であることに気付いた園子が、驚いて叫んだ。
「ああ…誰かがこの人のこめかみを拳銃で撃ちぬいたんだ」
遺体を確認しながら答える世良に、蘭が「で、でも」と反論する。
「この部屋、チェーンロックが掛かってたから、無理やり鎖を引きちぎって入ったよね?だから自殺なんじゃない?」
「いいえ。そのロックを掛けた方法はまだ謎だけど…こめかみの銃創の周りに焦げ跡が無い…離れた位置で撃たれた証拠だよ。拳銃で自分を撃つ場合、銃口は頭に密着させるはずだから」
小鳥の推察に、園子が「でもさー」と口を挟んだ。
「撃つ直前に怖くなって思わず離しちゃったとかは?」
「それもあり得ません」
小鳥は被害者が手に握らされている拳銃を確認しながら言う。
「拳銃の先にサイレンサーがついてるし…ほら、こんなに長いのに頭から離して撃つ方が困難でしょう?それに普通自殺する人はサイレンサーなんて使わないと思うし…向かいのソファーに拳銃で撃ったような跡も付いてます」
指さしたソファーの座面には、確かに焼け焦げたような跡が残っている。
「多分、被害者の手や袖口に発車残渣をつけて自殺に見せるために遺体に拳銃を握らせて一発余計に撃ったのさ。勿論犯人の手や袖口にも発射残渣は残っているだろうけど…手に付いたやつは水で洗えばすぐ取れるし、部屋の窓は直ぐ開くから、服はもう捨てちゃってるかもな…」
そう言うと、世良は強気に微笑んだ。
「でもまぁ、犯人はまだ確実にこの列車内だ…逃しはしないさ…」
その時、コナンの携帯が振動した。通知を確認したコナンが一瞬表情を変える。しかしすぐに平静に戻って、少年探偵団たちに声をかけた。
「とりあえずオメーらは蘭ねーちゃんと部屋に戻ってろよ!」
「えー!僕たちも何か手伝いますよ!」
光彦がすかさず口をとがらせる。
「余計なことはするな!オレが戻って来るまで部屋に鍵かけて、誰が訪ねてきても開けるんじゃねーぞ!!」
コナンに怒鳴りつけられ、灰原が「何よ、急に…」と、眉をひそめた。
「あ、だから…殺人犯がうろついてるから危ないだろう?」
「とにかく、警察に連絡して近くの駅に列車を止め、車内放送で警察が来るまで部屋から出るなって客たちに伝えてくれ!」
世良に指示を出され、「は、はい!」と、8号車の車掌は慌てて走り去っていった。小鳥は世良とコナンを交互に見た後、後ろ手に持っていた携帯で安室へとメッセージを送った――。
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