ベルツリー急行の謎


「どこ行っちゃったんだろう…」
小鳥は繋がらない携帯を見つめながら列車内を歩いていた。中々8号車にやってこない安室を心配して連絡をしているが電源が入っていないようで安室へは繋がらなかった。
「新一君たちが持ってたカードは偽物って事だよね。だったら犯人は何かの目的で室橋さんを8号車に移動させた…。いつも室橋さんが予約してるB室に。つまりあの車両でしかできないトリックって事だよね」
手を洗おうと立ち寄ったトイレで、何気なく鏡を見た小鳥はハッとする。すぐに踵を返しコナン達の元へと向かった。

「なあ、この一等車って何かあるのか?ほら、毎年同じ客が予約してるんだろ?」
世良は腕を組みながらそう車掌に問いかけた。
「このベルツリー急行は5年前に完成したんですが…この一等車は鈴木次郎吉相談役が友人の資産家のリクエストを受けて作ったと聞いています。なんでもその資産家はオリエント急行の大ファンで、家族全員でゆったり乗れるようこの車両だけ広くしたとか…」
「んじゃ、さっきの客たちはその資産家の家族なのか?」
小五郎の疑問に、車掌は「いいえ」と首を振った。
「その一家は初運行の一か月前の大火事で殆んど亡くなられていて…乗客の中では家族は一人だけかと…」
「誰だそれ?」
「D室にいらっしゃる小蓑様です…。確か亡くなられた資産家の伯母にあたられるとか…」
「その事件ならネットに載ってるよ!」
スマートフォンを操作しながら、世良が言った。
「その資産家の誕生パーティー中に起きた火事で亡くなったのは、その家族とパーティーに来ていた客たち12人…助け出されたのは今、話に出た小蓑さんとメイドの住友さんと4人の客人って書いてあるけど…」
「ひょっとしてその4人、さっきの乗客たちなんじゃねーか?」
小五郎がはっとして言う。世良は、ネットの記事に目を走らせた。
「出火原因は電気系統のトラブルらしいけど、はっきりとはつかめていないようだよ…」
「今回の殺しがその火事に絡んだ復讐劇なら…いよいよオリエント急行殺人事件じみてきたじゃねーか!こりゃーまたさっきの客たちに話を聞いてみるか!」
小五郎が嬉しそうに息巻く。
「ねえ、電気って言えばさー…なんでA室の電球が切れてるのに交換しなかったの?」
コナンが何気なく車掌に質問した。
「この一等車の後ろは貨物車で、いつもは予備の電球が置いてあるのに見つからなかったんだ…」
「じゃあさ、発車前に色々点検するのって車掌さんなの?」
「ああ…ちゃんと部屋の水が出るかとか、2,3人で…。そう言えばこの車掌の制服も一着無くなったとか言ってたなぁ」
その時、コナンの上着のポケットの中で、携帯電話が振動した。真剣な様子でメールを確認するコナンを、世良が後ろからのぞき込む。
「ん?何か気になる事でもあるのか?」
「あ、ううん…」
コナンは携帯をサッと背中に隠すと、作り笑いを浮かべた。


「今何号車かわからない…やばたにえん…」
一方、車内で迷っていた小鳥は壁に手をついて冷や汗を浮かべた。事件のトリックが分かったので何とかコナンに教えたいが携帯の電源が切れてしまっていた。ふと視線を前方に向ければ、不安そうな面持ちで廊下を走る灰原が見える。
「あれ…哀ちゃん?」
首を傾げると横の扉から沖矢が姿を現し、小鳥は慌てて扉の陰に隠れた。
「さすがに姉妹だな…行動が手に取るように分かる…。」
沖矢は携帯のカメラレンズを灰原に向けると、囁くように言った。
「さぁ…来てもらおうか…こちらのエリアに…」
(あの人…新一くんが家に入れたって言ってたけど、若しかして組織の…)
「小鳥さん?」
「ひゃあ!?」
突如かけられた声に驚いて振り返ると、ずっと会いたかった男が立っている。小鳥は安心したように安室に抱き着いた。
「安室さん〜〜〜…ずっと携帯繋がらなくて心配しました…!逢いたかった!」
「ちょ、小鳥さん…大胆すぎですよ…可愛いなぁ。携帯が繋がらないって、変ですねぇ…電源はずっと入ってますが貴女からの着信は…」
安室は眉を潜め、小鳥のポケットから携帯を抜き取る。
「これ、少し預からせて貰えますか?」
「え?良いですけど…」
小鳥は安室の行動に不思議そうな顔をした。

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