「今年の仮免試験、2-Aは2組に分かれて受験する事となった」

私達2-Aの面々は、先生からの言葉に衝撃を受けていた。

「先生、もっと詳しく説明をお願いします」
「わかっている、画色。ヒーロー資格試験は同校生徒での潰し合いを避けるため、分けて受験を指せるのがセオリーだが……今年はちょっとやり方を変える事にした」
「やり方を変える?」
「うちのクラスが2組に分かれ1-A、1-Bと一緒に受験をすることになった」
「はああああ!?!?」

クラスのムードメーカーである久射君が大声を上げた。
その声は私たち全員の声を代弁している、的確なリアクションだ。

「どうして俺ら2年がバラバラにならなきゃいけねーんすか!」
「1年が分かれればいーじゃん!」

次々に上がる抗議の声。
先生は申し訳なさそうな表情を浮かべて口ごもった。

「予算の関係ですね」

ぴしゃりと。
まるで冷水を被ったかのようにこの場の雰囲気が凍り付いた。
発言者である七絵は周りの雰囲気に気づいていながらも、臆することなく話を続けている。

「寮も建てたばかりですもんね。全国3か所の試験会場に行くより、2箇所の方が学校側としては割安ですよね」
「な、七絵……」
「ただでさえこの間の神野事件で今、雄英は問題視されてますからね。スポンサーからのお金もあんまり降りなかったんでしょ」
「七絵、わかったから……!!」

七絵の言葉に、先生は目に見えて項垂れていた。
きっと図星なんだろう。
なんだか居た堪れなくなってくる。

「でもなんで2年が分かれなくちゃいけねえんだよー。せっかくなら、みんなで受けたいぜー」
「それはな……!」
「まだ入学して半月ぐらいしか経ってない1年より、ある程度団結できてる2年生の方が分かれても統率取れるって判断したんじゃない?」
「なるほどー!さすが画色―!」

またも先生の言葉を遮って、七絵は淡々と話を続けた。
本当、色々と不憫すぎるからそろそろやめてあげてほしい。

「とりあえず、このプリントを見といてくれ」

配られたプリントに目を通す。
そこには受験場所と同行クラス、引率の先生が表記されていた。

「七絵、一緒だねー!」

親友が一緒でとても頼もしい。
純粋に喜んでいると、七絵はにやりと口角を上げた。

「轟君も、ね」

もう驚かない。この展開は予想の範囲内だ。

「あ、そうそう。爆豪君もね?」

その発言に、思い切り吹き出してしまった。
隣にいた久射君が、奏出って結構下品だよなー。とかデリカシーのないことを言っている。
久射君の言葉は聞かなかったことにしておこう。

「いいなー。彩海、モテキだもんねー。羨ましいわー」
「何々?奏出モテキなの!?」
「違うから。久射君、少しうるさい」
「奏出って俺には結構厳しいよなー」

爆豪君に告白された事は、彼には言わなかった。
私が寮に来たことは切島君も黙っていてくれたようで、彼に問われることもなかった。
あとは私が普段通りに爆豪君と接すればいいのだ。
そう、普段通りに。

「普通に出来るかねえ。彩海ってすぐ顔に出るし」

いよいよヒーロー仮免許取得試験当日。
多古場競技場に向かうバスの中で、七絵が鼻で笑っていった。
ちなみに、バスも1-Aと合同。
同じ空間に当事者がいるんだ。こんなリスキーな行動、本当やめてほしい。

「七絵ってどうしてこういう時は意地悪なの……」
「モテない女の僻みかな」
「何々、何の話ー?」

この間の久射君がまた会話に割って入ってきた。
彼の声は大きくて通りやすいから、できれば入ってきてほしくない。
変なことでも言われて誤解されたらと思うとぞっとする。

「彩海の惚気を聞いて、彼氏欲しいなって言ってたところ」
「俺も彼女欲しいわー!けど奏出って、モテるのにずっと彼氏いなかったよなー」
「え?ちょっと、く、久射君?」
「1年の時、先輩とかいろんな人に告白されまくってた時期あったじゃんー。俺、あんな漫画みたいな光景初めて見たわー!」
「久射君!ちょっと静かにして!」
「いやー、奏出の声の方が大きいってー。ほら、みんな奏出の事みてるぜー」

久射君の言葉に、恐る恐る周りを見渡す。
久射君の言う通り、1-Aの子たちの視線が嫌というほど私に集まっていた。
そして、1人の人物と目が合った。
彼だ。

「……!!」

素っ気なく、私から目を逸らした。
眉間に皺を寄せて、窓の外を眺めている。
遠くからでもわかる。彼は怒っている。

「……久射、後で彩海に謝りな」
「え?なんで?」
「プライベートの事、言いふらされたら誰だって嫌でしょ」
「そうかもしんねーけど、奏出がモテる事なんて今に始まったわけじゃねーじゃん」

よくわかんねーなー。
久射君は不思議そうに首を傾げていた。
相変わらず、久射君の声は大きくて、バスの中全員に聞こえるぐらいに響き渡っていた。


noisy

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