「彩海?」
私を目にした彼は少し驚いているようにみえた。
「迎えにきちゃった」
涙は教室のドアを開ける前に拭い去った。
とびきりの満面の笑顔で、彼を迎える。
「……」
けれど、彼の表情はそれに反するように曇っていた。
「なんで教室まで迎えにくんだよ」
彼は小さくため息を吐く。
その煩わしそうな態度に、心中で安堵のため息を漏らした。
「ちょっと!置いてかないでよ、焦ちゃん!」
私の隣をするりと通り抜けていく彼。
後を追う様に身体の方向を変えようとした瞬間。
「奏出さん!」
「はっ、はい!」
突然掴まれ、引き留められた腕。
反射的に間抜けな声をあげてしまった。
「テレビより生で見た方がすげえかわいいっすね!」
そこにいたのはナンパな雰囲気の男の子。
きっと1-Aの生徒なんだろう。
この手のタイプは正直苦手だけど、彼のクラスメイトを無下には出来ない。
「俺、上鳴電気っす!よろしくお願いします!」
差し出された手に応えて握手を交わす。
頑張って作った笑顔はきっと引きつっているだろう。
「奏出さん今度飯でもどうすか?よかったらメアド教えてください!」
けれど上鳴くんはそんなことには動じない様子だ。
どうしよう。
早く彼を追いかけたいのに。
どうやって断れば、穏便にことが済むのだろう。
「おい邪魔だ。どけ」
そこに割入ったのは、1人の男の子。
鋭い目つきは、物凄い迫力と威圧感を放っている。
「あ、悪ィ」
男の子のおかげで、握手していた手が解放された。
「じゃあ、私もこれで!」
便乗するかのように教室を去ることが出来た。
先に歩く、目の前の男の子のおかげだ。
「遅い」
その更に先に待ち構えていたのは。
「行くぞ」
先ほど教室を去った彼だ。
「待ってよ、焦ちゃん」
私は彼の許へと駆け出す。
すれ違いざま、先ほどの男の子と目が合った気がした。
contact
prev|list|next
top