ある日の放課後。
また彼と一緒に帰るために1-Aの教室へと向かう。
「焦ちゃんまだいるかなあ」
担任の先生に頼まれた雑用をこなしていたら普段よりも遅くなってしまった。
彼のことだ。
迎えに行かなければ先に帰ってしまうに違いない。
「あ、あの!」
急ぎ足で廊下を駆けだしていたが、呼び止められた声によって反射的に止まってしまった。
どうしてこうも、体は素直なんだろう。
「轟くんなら帰りました、けど……」
「えっ」
そこにいたのは地味な印象の男の子。
挙動不審な態度。
わずかに冷や汗をかいているようにも見える。
別に自分が悪いわけでもないのに申し訳なさそうな表情を浮かべていた。
「そっか、ありがとう。えっと、君は……」
「み、緑谷。緑谷出久です。轟くんのクラスメイトの」
この間の上鳴くんとはまた違う、真面目なタイプなんだろう。
謙虚な態度はとても好感が持てる。
「やっぱ間に合わなかったかあ……」
「や、約束でもしてたんですか?」
「ううん。私がいつも勝手に迎えに来てるだけなんだけど……」
緑谷君の手元に思わず目を奪われる。
大事そうに抱え込まれている、使い込まれたノート。
見るからに年季が入ってそうな代物だ。
「それ、何のノート?」
「あ、こ、これは……!!」
突然指摘されて焦ったのか、緑谷君は勢いよくノートを床に落とした。
そして、偶然開かれたページには。
「……え?」
"奏出彩海"
大きく掲げられた、私の名前。
"個性:人魚"
そして、私の個性が記されていた。
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