緑谷くんの話によると、今日は初めてのヒーロー基礎学がある日らしい。
彼は推薦入学だから、クラスの子達は目の当たりにしたはずだ。
彼の個性の凄さを。
彼の実力は同年代の中では飛びぬけている。

「……複雑」

嬉しいような。
悲しいような。
寂しいような。

このもやもやとした感情を表現する言葉が見つからない。
いつも通りに彼を迎えに1-Aまで出向いた。
そこから聞こえてきたのは、活気めいているクラスメイト達の声。

「轟くん、とてもすごかったよね!」

1つの称賛の声を始めとして、クラス中がどんどん湧き上がっていく。
その雰囲気に私はドアを開けることがどうしてもできなかった。

「……そんなこと、私が一番知ってるんだから」

帰り道の途中のベンチに座りながら、つま先で小石を蹴り飛ばす。
晴れないこの気持ちはどうすればいいのだろう。

「あ」

思わず漏らしてしまった間の抜けた声。
そこに見覚えのある人物が現れた。

「てめぇは……」

彼は確か、彼と同じクラスの子だ。
上鳴くんに絡まれていた時、結果的に私を助けてくれた子。
相変わらず凄味のある目つきからは、ただならぬ威圧感が漂っている。

「えっと……1-Aの子、だよね?」

話しかけたというのに、男の子は黙ったまま。
私を睨んで立ちすくんだままだ。
こうも真正面から睨まれると、少し怯んでしまう。

「は、早いね。みんなで残ってるんじゃないかったんだ?」
「あ?」

先ほどよりも更に、目つきがきつくなる。
私はどうやら地雷を踏んでしまったようだ。

「お前……氷の奴ばっか追っかけて、楽しいか?」

なぜだろう。
男の子のその言葉は、まるで私を突き刺す刃のように鋭くて。

何も言い返せない私を横目で見て、男の子はその場から去って行った。


mixed feelings

prevlistnext
top