息が切れて苦しい。
けれど今はそれどころじゃない。
一刻も早く、この眼で確かめなければ。
「焦ちゃん!」
勢いよく開いたドアの先に見えたのは。
「彩海?」
いつもと変わらない彼の姿があった。
「焦ちゃ…怪我はない!?本当に無傷だったの?」
「あ、ああ」
彼の身体に触れるが異変はない。
安否を確認したら、途端に体の力が一期抜けていくのが解った。
「よかった……無事でよかったよ……」
安心して思わず床に座り込む。
急いで駆けてきたから息はまだ弾んでいるが、少しずつ落ち着いてきた。
1-Aの授業で敵(ヴィラン)が現れたと聞き、いてもたってもいられなかったのだ。
「お前はまた、なんの悪びれもなく人の部屋に上り込んで……」
「今回はしょうがないでしょ!本当に心配したんだから!」
「ちゃんとメールしただろ」
「あんなメール文じゃ、無事かどうかわかんないよ!」
私が安否の確認をするために送信したメール。
その返信は、短いたった一文で締めくくられていた。
"心配するな。"
こんな文章で、安心できるわけがない。
「彩海」
ああ。
君はなんて人だ。
私の名前を呼ぶその声色は、いつもより落ち着いている。
普段とは少し違う雰囲気に、思わず彼の目を見据えた。
左右異なる瞳の色はとても綺麗だ。
「髪、ぼさぼさだぞ」
君はずるい。
私はこんなにも君を意識しているのに。
「……!!」
君はいともたやすく、私に触れてしまう。
「帰る!!」
居てもたってもいられなくて急いで彼の部屋を飛び出す。
頬は一気に熱を持ち、心臓は煩いくらい脈を打っている。
「ずるいよ……」
自分を落ち着かせるために、深い深呼吸をする。
門に寄りかかった体は、脱力するようにずるずると下へ落ちて行った。
しゃがみ込みながら触れられた髪を眺める。
「……でも、好きだよ」
ほんの些細なこと。
けれど彼のすることすべてが、私にはとても尊いのだ。
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