雄英体育祭当日。
早くに目が覚めた私は、制服を纏い家を飛び出す。
隣の家に着くと、タイミングよくお目当ての人物が現れた。
「おはよう、焦ちゃん」
「……ああ」
思わず息をのんだ。
いつもとは違う雰囲気。
まるで違う人みたい。
そう思えてしまうほど、凍てつくような鋭い目つきをしている。
「いよいよだね。頑張ろうね!」
彼からの返答はない。
うまく言葉を紡ぐことが出来ず、互いに無言のまま学校への道を進む。
こんなに近くに彼がいるのに、まるで遥か遠くにいるようだ。
いつもなら気にならない空白の時間が、今はとても重苦しく感じる。
"オールマイトに気に入られているかも。"
あの言葉を聞いてから、彼は目に見えて苛立っていた。
体育祭が近づくにつれて、その苛つきは増していった。
凄みの雰囲気に、幼馴染の私でも近寄ることを躊躇してしまいそうになる。
「焦ちゃん!」
あと少しで学校に着く。
私は堪えきれず、彼の袖を強く引いた。
彼は驚く素振りも見せずに、こちらをただ見つめている。
違う。これは私の見たい彼ではない。
こんな顔を見ていたいのではない。
「私、焦ちゃんのこと信じてるよ」
言いたいことはたくさんある。
けれど、これが今伝えられる、精一杯の私の気持ち。
これ以上の言葉は思い浮かばなかった。
「何言ってんだよ」
先ほどよりも強く、彼の袖を握る。
それを合図にしたかのように、彼は私に向き直った。
「自分の心配をしてろ」
彼の眉間の皺が、一瞬だけ緩んだ気がした。
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