「彩海ー。レクリエーションどうするー?」

昼休憩が終わり、午後の部が開始される。
一番最初のプログラムはレクリエーション種目だ。
最終種目参加の生徒は自由参加となっている。
私と七絵は最終種目まで進出しているため、選択権があった。

「私いいや。少し気分転換してくる。七絵は?」
「私も参加しないで、みんなの様子を見てようかな」
「そっか。じゃあまたあとでね」

私は七絵に手を振ると、踵を返す。

「彩海、最終種目が始まったら連絡するからね!」

きっと、彼女には私がどこに行こうかなんてお見通しなんだろう。
けれど深くは聞かない。
その優しさが、素直に嬉しかった。





2年ステージを抜けて突き進む。
盛り上がる活気のいい声援がどんどんと遠のいていった。
たわやかな風を肌で感じながら、ゆっくりと進んで行く。
あまりの心地よさに自然と瞼が降りていった。

こんなにも穏やかな日差しが降り注いでいるのに。
自分の心の奥にはもやがかかっている。
青天な空に対して、私の心は曇天模様だ。

「こんなところにいた」

でもそれはきっと。

「焦ちゃん」

私だけじゃない。

「彩海……」

たどり着いた1年ステージの傍ら。
集中するかのように1人で座り込んでいた彼は、私からバツが悪そうに視線を逸らした。

「なんとなく思ったの」

地面に膝を付き身体を屈める。
それに反応するかのように、彼はゆっくりと顔を上げた。

「また1人で顔を俯かせてるんじゃないかなって」

驚いたような。意表を突かれたような。
まるでキツネにつままれたような表情。
その顔つきに、私の口角は自然と上がっていく。

「やっとこっちを見てくれた」

見開いた目は少しずつ戻り、穏やかな目つきに変わる。
目線は私の瞳を捉えたままだ。

「彩海」

彼が私の名前を呼ぶ。

「俺は右手だけで勝ち続ける。絶対に」

彼の視線は自身の右手に移る。
まるで決意を固めたかのように、彼は右手を強く握った。

「……うん」

穏やかな風が吹き、私と彼の髪をなびかせる。
彼の赤い髪が揺れるたびに、顔の傷が見え隠れする。

「私、焦ちゃんのこと信じてるよ」

そう、信じてる。
君は強い人だから、きっとちゃんと向き合ってくれるって。
いつかまた、私の待ち望むあの姿を目に出来るって。

この言葉の意味は、ちゃんと君に届くだろうか。

「いたっ」

彼は私の額を小突く。
咄嗟に突かれた場所を手で覆った。

「それより、こんなところにいていいのか。自分の試合はどうした」
「今はレク種目だから参加しなくてもいいもん」
「何言ってんだ。早く戻れよ」

彼に促され、私は渋々重い腰を上げる。
するとそれと同じ様に、彼もゆっくりと立ち上がった。
今までは同じ高さだった目線がずれ、自然と頭は後ろに傾く。

「勝てよ、彩海」

彼の右手が、私の頭を優しく撫でる。
口元はわずかに弧を描いていた。

ずるい。こんなの反則だ。
私の心臓は高鳴る一方だ。

「う、うん」

やっとの思いで頭を縦に1回振る。
彼の右手はゆっくりと離れていく。
会場に向かう後ろ姿を目に焼き付けるように、その姿が見えなくなるまで追い続けた。

determination

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