雄英体育祭、最終種目。
今年はトーナメント形式による、個人戦だ。
1回戦目が終わり、今は2回戦目までの小休憩の時間となっている。

「1年生の方もだいぶ盛り上がってるみたいだよ」

観客席にある、2-A組の座席。
隣に腰掛ける七絵が私に話しかけた。

「彩海の言う通り、轟くんって本当にすごいね」

テレビでやっている中継のリプレイ映像。
七絵はケータイで彼の1回戦の様子を見せてくれた。

「焦ちゃん……」

会場を突き抜けるほどの大氷壁。
けれど、そんなことよりも気になるのは、彼の苛立った表情。
さっき会った時とは違う顔つき。
もしかしたら、あの後おじさんとなにかあったのかもしれない。


「奏出!奏出!」

突然名前を呼ばれ振り返る。
クラスメイトが忙しなくこちらに向かって手を振っていた。

「あれって……エンデヴァー!?」

その隣に仁王立ちするのはおじさんだ。
突然のNo.2ヒーローの登場に、周りはざわめいている。

「順調そうだな、彩海」

私の近くまでゆっくりと歩み寄るおじさん。
周囲の視線はこちらに釘づけだ。

「2回戦目まで時間があるだろう。これから焦凍の試合を見ないか」
「え?」
「あいつも彩海がいた方がやる気が出るだろうからな」
「そんなことはないと思いますけど……」
「いいじゃん。行ってきなよ」

話しに割入ったのは七絵だ。

「彩海の試合まではまだ時間あるし。それに、あんたも気になってしょうがないでしょ?」
「七絵……」
「試合が近づいて来たら連絡してあげるからさ」
「ありがとう、七絵!」

ここは七絵の厚意に甘えることにしよう。

「じゃあ行くぞ」

おじさんの後に続き、2年生ステージを後にする。
広く大きい背中は、彼の後姿を彷彿させた。

「これから焦凍が戦う少年だがな」

おじさんはこちらに振り返ることなく口を開く。

「パワーだけではオールマイトに匹敵するほどの個性の子だ。有益な試合になればいいが」

1年生にそんな子がいたなんて。


"オールマイトに気に入られているかも。"


食堂での言葉を思い出す。
もしかして、彼の次の試合相手は。

「緑谷くん、ですか?」
「名前までは知らん」
「そ、そうですか」
「彩海。俺は焦凍の様子を見てくる。一緒に来るか?」
「私は観客席に居ます。何抜け出してきてんだって、焦ちゃんに怒られそうだし」
「そうか」

おじさんはそのまま控室に向かう。
私は1つ大きな深呼吸をした。

「大丈夫。焦ちゃんならきっと、大丈夫……」

自分に言い聞かせる様な、小さな独り言。
吹き抜ける風が木々を揺らし、私の声をかき消していった。


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