「なんでテメェがここにいんだ?ギョジン」

相変わらずの辛辣な言葉遣い。
私は苦笑しながら、両手を合わせた。

「ごめんね爆豪くん。焦ちゃんの試合だけでいいからここで見させてくれないかな」
「一般席から見ろ」
「それが……お客さん達から注目を浴びてしまってみるどころじゃなくなっちゃって……」

目立たない様にジャージを脱いで観客席に潜り込んだのに。
周りの観客たちはあっという間に私を見つけ、大騒ぎになってしまった。
ここなら他の生徒たちもいるし、悪目立ちはしないと踏んだのだ。

「また金魚のフンみたいなことしやがって」
「はは……返す言葉もないや」

爆豪くんの隣に腰掛ける。
ステージには相変わらず険しい表情の彼がいた。
そしてその向かいに立つのは。

「緑谷くん……」

やはり、私の予感は的中していた。

「緑谷対轟、スタート!!」

プレゼントマイクの声を合図に、双方は動き出す。
初めて見る緑谷くんの個性は、本当にオールマイトを彷彿とさせるものだった。

「焦ちゃん……」

緑谷くんは彼に向かってたくさんの言葉を投げかける。
その1つ1つは、私の中に彼の幼少期を思い出させる。
彼が右手に固執するきっかけ。
私はすべて近くで見てきたんだ。

「君の力じゃないか!!」

緑谷くんの声。
私は思わず目を見開く。

「おい!テメェなに急に立ち上がって……」
「……嘘」

信じられない。
夢ではないのだろうか。
目の前に見えるのは、鮮やかな灼熱の炎。

「私の……ヒーロー……」

私の憧れた姿。
何度も望んだ、彼の姿だ。

「どうなっても知らねえぞ」

彼と緑谷くんは身構え、戦闘態勢に入る。
2人の個性がぶつかり、会場は大きな爆風に包まれた。
立ち上った煙が少しずつ晴れて、視界が開けていく。

「緑谷くん……場外」

アナウンスが響く。

「轟くん――……三回戦進出!!」

勝利の知らせを合図に、私の目から涙が1つ、伝って落ちた。


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