『雄英2年の頂点を決める決勝戦が間もなく始まろうとしています!』
活気のいいアナウンスが響き渡る。
『決勝は… 奏出 対 稲妻!去年の優勝・準優勝者が顔を揃えました!』
向かい合う稲妻くんは、好戦的な笑みを浮かべていた。
「奏出。また戦える日が来るなんて俺は嬉しいぜ」
「私もだよ、稲妻くん」
「本当か?そんな風な表情、してねえけど」
「え?」
稲妻くんは呆れたようにため息を吐いた。
私、どんな表情しているんだろう。
「まあいいや。本気にさせてやるよ。俺の力で!」
いけない。集中しなくちゃ。
そうわかっているのに。
『決勝戦、スタート!!!』
どうして、頭から彼のことが離れないのだろう。
「行くぜ奏出!!!!!」
凄まじい大音量。
目の前には稲光が迫り来ている。
「先手必勝だ!来いよ、奏出!」
迫りくる電撃を作り上げた水壁で防ぐ。
互いの攻撃が激しい音を立ててぶつかり合った。
"彩海ちゃんの歌が大好きよ"
どうして、こんな時におばさんの言葉を思い出すんだろう。
『相変わらず見とれるほどに美しい!奏出は人魚に姿を変えました!!』
父から水を自在に操り、半身を魚人化する力を授かった。
母から人の心情を自在に操り、翻弄させる歌声を授かった。
2つの個性が合わさり、私に人魚という個性が生まれた。
世の中には人魚にまつわる童話や昔話がたくさんあって。
まるで自分のことのように思えて、片っ端から色々な本を読み漁った。
"人魚は不吉の象徴。人魚の歌声は人を不幸にしてしまう。"
それが、人魚。
それが、私。
まるで鋭利な刃物で傷つけられるような感覚。
幼い頃に読み聞かせてもらった人魚姫の絵本は、都合のいいハッピーエンドに創り上げられたものだと知った。
「うおっ!!」
『稲妻の背後から現れる噴水!!いったいどこからこんだけの水が溢れ出てくるんだ!?』
私が人魚でなければ、きっと幸せにいられたんじゃないのかな。
私の歌声が、あなたたちを不幸にしているんじゃないのか。
そう思いつつも私は歌うことを辞めない。
"おばさん、彩海ちゃんの歌が大好きよ。だからこれからも歌い続けてね"
自分を必要としてくれている、その言葉が嬉しくて。
その優しさに甘え、縋り続けている。
『ここは海か?突然現れた大津波!!奏出、去年とは比にならない程の火力です!!!!』
ごめんね、焦ちゃん。
ごめんね、おばさん。
ごめんね、おじさん。
ごめんね、みんな。
「こい!!打ち消してやる!!!」
『大津波と雷がぶつかり合い会場に大量の大雨が降り注いでいます!!霧に包まれ2人の姿が見えません!!一体どうなっているんだ!?』
人魚はいつか、泡となり消えていく。
『稲妻の足を渦潮状の水が拘束しています!!じりじりと稲妻に近づいていく奏出!今日は噂の歌声を聴くことができるのでしょうか!!』
「ついに出すのか、奏出!」
「……ううん」
その時まで、どうか。
『凄まじい噴水が直撃!!稲妻の身は大きく投げうたれました!!』
「ごめんね、稲妻くん」
『稲妻……戦闘不能』
私がこうして在ることを。
『優勝は2-A 奏出彩海だああ!!!!』
どうか、許してください。
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