「奏出さん、こっちこっち!」
無事に体育祭も閉幕。
優勝したため、写真撮影やインタビューがあるとかで、私は呼び出されていた。
先生に手招きされて向かった場所には、1年生から3年生の上位入賞者が顔を揃えている。
「ば、爆豪くん?」
体中を拘束されており、必死にもがいて抗っている爆豪くん。
凄まじい形相で何かを叫びながら一方を睨み続けている。
その視線の先にいたのは、彼だ。
「焦ちゃん」
声かけると、彼が顔を上げる。
するとそれに反応したのか、爆豪くんが更に暴れはじめた。
「優勝したの?」
「違う。優勝は爆豪だ」
よく見れば、彼の首からは銀のメダルが下がっている。
爆豪くんの首には金メダルが光り輝いていた。
なぜ優勝したのに拘束されているのだろう。
色々とぶっ飛んでいて、苦笑することしか出来ない。
「彩海。放課後、一緒に帰るぞ」
「え?」
突然の誘いに、思わず間抜けな声をあげてしまった。
いつもならそんなこと絶対に言わないのに。
「話がある」
彼の顔から、いつもの眉間の皺が消えている。
「焦ちゃん……」
再び浮かんだ、彼の試合風景。
左手を使った彼は笑っていた。
「奏出!!」
突然肩を叩かれ、我に返る。
振り返ると後ろには稲妻くんが立っていた。
「何1年と遊んでるんだよ。他の2年のやつら待ってるぞ」
「ご、ごめんなさい」
「ほら行くぞ」
「ちょっとまって…!」
力強く私の手を引く稲妻くん。
その反動で、私の体は大きくよろめいた。
「わ……!」
「大丈夫か?」
転びそうになった私を咄嗟に支えてくれた彼。
力強い腕が私の身体を支えている。
「あ、ありがと!!」
瞬時に先ほど彼に抱きしめられた記憶が蘇る。
恥ずかしさのあまり、私は彼から顔を逸らした。
「悪い奏出。っと……君がエンデヴァーの息子の轟くん?」
「はい」
小さく稲妻くんに向かって会釈をする彼。
けれどそれに反するように、稲妻くんは冷たい眼差しで彼を見ていた。
それは、睨んでいるという表現の方がぴったりかもしれない。
いつもは朗らかな稲妻くんとは思えないその姿に、私は思わず怯んでしまう。
「なあ奏出。本当はさ、今日お前に歌声の方の個性、絶対使わせてやる!って思ってた」
「え?」
「すごいいい個性なのに、お前使わないじゃん?もし追い詰められたら使うじゃないかって…全力を俺に出してくれるんじゃないかって思ってたんだよね」
「稲妻くん……」
稲妻くんは一呼吸置いて、私に向かって優しく微笑む。
いつも通りのその表情に、思わず安堵して肩の力が抜けおちる。
それに気付いたのか、稲妻くんは私に向き直って、掴んでいた腕を離した。
「それでお前に勝てたら俺、お前に告白しようと思ったんだ」
「……え?」
「好きだって伝えようとした。けどまだ保留にしとく!来年優勝したら絶対に言うから。それまで待ってろよ!」
その言葉の意味を理解している間、数秒。
周りの記者たちは一気にシャッターを切り始める。
「すげえ!!かっこいい!!!」
「奏出さん、来年が楽しみですね!」
「え、あの……ちょっと……!」
私と稲妻くんを取り囲むように勢いよく群がるメディア関連の人たち。
あまりの凄さに、私は身動きを取ることが出来なくなってしまった。
confession
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