稲妻くんの爆弾発言によりメディアの人たちからの集中攻撃を受け、すっかり疲弊してしまった。
今年の体育祭は色々な意味で波乱万丈だった気がする。
「彩海、お疲れさま」
「七絵」
「轟くんから伝言預かってきた。校舎裏で待ってるってさ」
表彰式の時はみんながいたけど、帰り道は2人きりだ。
彼とどんな顔をして会えばいいんだろう。
私もまだ、整理がうまくついていないのに。
「彩海。いい報告待ってるよ」
色々と察してくれたのだろう。
七絵は私の肩を優しく叩いた。
「ありがとう、七絵」
私は身支度を整えると、足早に教室を後にする。
人目を掻い潜りながら校舎裏に向かうと、見慣れた白と赤色のショートヘアが目に映った。
「焦ちゃん」
私の声に反応し、彼がこちらを見る。
その顔つきは少し穏やかに見えた。
「ごめんね、遅くなって」
「いや。そんなに待ってない」
2人で肩を並べて帰路につく。
言いたいことはたくさんある。
聞きたいことはたくさんある。
けれどその気持ちをこらえて、ただ彼の言葉を待った。
自宅まではもう目と鼻の先の距離。
このままでは何も話さないまま終わってしまう。
「彩海」
やっと彼が沈黙を破った。
自然と足を止める。
私たちは向かい合い、互いの目を見つめた。
「明日、お母さんの見舞いに一緒に行ってくれないか」
風が吹く。
彼の髪がゆっくりと揺れ動く。
そして同じように、私の髪も大きく揺れて動いている。
「……うん」
私は何もしていない。
私は何も力になれない。
緑谷くんが彼を突き動かした。
緑谷くんが背中を押してくれた。
緑谷くんが彼を救ってくれたんだ。
ずっとそばにいたのに。
「……いいよ」
私は何もできなかった。
彼が前に進もうとしている。
嬉しい。喜ばしいことのはずなのに。
素直に喜べない自分。
そんな自分が憎くて、嫌いでたまらなかった。
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