「第一試合のやつらは前に出て来い」

相澤先生のその一言で、稲妻くんは爽快な返事をして前に進んで行った。
それに倣うように彼もゆっくりと歩き出す姿が見えた。
その後ろから怠そうに現れる爆豪くん。

私は前に出ることが出来ずにいた。

「奏出、どうしたんだよ。早く来いよ!」

稲妻くんが私の方へ手招きをしている。
その奥では、彼がまっすぐな瞳でこちらを見据えていた。

「焦ちゃん……」

どうして彼と対戦をしなければならないのだろうか。
確かに体育祭上位同士での組み合わせは妥当かもしれない。
けれど。

「先生!」

私は思い切って声をあげる。
周囲の人たちの視線が一気に私へ集まった。

「ご存じだとは思いますが、轟くんと私は幼馴染です。互いの個性は把握しています。それならもっと他の人と試合をした方が練習になると思います」

周りはざわめく。
小声で私の意見に対し、肯定や否定の意見を囁き合っている。
私は息をのんで、先生の答えを待った。

「だからだよ」

先生はいつもとは違う低く大きな声色で一喝する。

「だから戦うんだ。旧知の中だからこそ見えてない、知らない部分もある。思い込みだってあるはずだ。それに1年生に言っただろ。希望した事務所に行ってる先輩がいるって」
「え……?」
「轟の希望は、お前が去年訪れた事務所だ」

思わず耳を疑った。
信じられない。
だって、私が去年行ったヒーロー事務所は。

「焦ちゃん……本当なの?」

彼の忌み嫌う、父親。
No.2ヒーロー、エンデヴァーの事務所だ。

「……ああ」

先生の言うとおりだ。
彼の事なら、なんでもわかっていると思っていた。
けれど、本当は。

「……先生、授業を中断して申し訳ありませんでした」

彼の事など、私は何もわかっていないのかもしれない。


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