「クソがあああ!!」
爆豪くんは私の腕の中で眠る彼を見た瞬間、凄まじい威力で爆発を起こした。
私はそんな彼にめがけて滝のような水を浴びせ、その爆発を抑え込む。
「ナイス、奏出!!」
水に濡れた爆豪くんは先ほどよりも電気が通りやすくなった。
稲妻くんは絶好のチャンスと言わんばかりの強力な電撃を放つ。
まともにくらった爆豪くんはその場に弱弱しく倒れこんだ。
「……稲妻雷光、奏出彩海、勝利!」
相澤先生のその一言で、周りの生徒たちは一気にざわめき出す。
「やったな!奏出!」
笑顔で拳を向ける稲妻くん。
本当は同じように拳を返したかったが、両腕が塞がっていたため微笑みで応えた。
「奏出。大丈夫か?」
相澤先生が私の許へと歩み寄る。
眠り込んだ彼がもたれかかっているため、重みで身動きが取れない私を心配してくれているようだ。
それに続くように、稲妻くんも私のもとへと駆け寄った。
「大丈夫です。もう少しで起きますから」
すると私の言葉を合図にしたかのように、彼の体が少し動いた。
「焦ちゃん」
「彩海……?」
目を醒ました彼は、寝ぼけ眼で私を見つめている。
その顔つきは昔から全然変わってなくて、思わず頬が緩んだ。
「……負けたのか」
状況を理解したのか、彼は私から距離を取る。
爆豪くんは起き上がった彼を見るなり、激しい剣幕で詰め寄り始めた。
先ほど弱弱しく倒れたとは思えないほどの威勢のよさに私は思わず苦笑する。
「噂通り、すごいタフネス……」
「俺の電撃、あんまり効いてねえのかな」
「そんなことはないと思うけど」
私と稲妻くんの視線に気づいたのか。
爆豪くんはバツが悪そうに舌打ちをして、顔をそらした。
「それはそうと……奏出、リカバリーガールのところに行こう」
「わっ!稲妻くん!?」
突然体が軽くなり、一瞬で宙に浮いたような感覚に陥る。
稲妻君の顔が一気に近くなり、私は状況を理解した。
これはいわゆる、お姫様抱っこというやつだ。
周りの生徒たちの視線が一気に集中する。
そしてそれはもちろん、彼の視線もだ。
「恥ずかしいよ!降ろして!」
「奏出の脚、凍傷してんじゃねえか。無理すんなよ」
「大丈夫!自分で歩けるから!お願い降ろして!」
「奏出」
いつもより低い稲妻くんの声。
思わず私は動きを止める。
「……あいつには、歌の個性使うんだな」
稲妻くんがささやくその声は、消えそうなほど小さくて。
初めてみる悲しそうな表情に、何も言えなくなってしまった。
hurt
prev|list|next
top