彼を追いたどり着いた薄暗い路地裏。
そこには横たわるヒーローと男の子、緑谷くんの姿。

「!!」

そして、男の子に向かって刀を振り下ろすヒーロー殺しの姿があった。

「緑谷、こういうのはもっと詳しく書くべきだ」

私はこんな時に何を思っているんだろう。

「遅くなっちまっただろ」

目の前を走った氷と炎。
彼の両腕から放たれたそれは、とても綺麗で。
思わず溢れだしそうになった涙を必死にこらえた。

「彩海!気を抜くな!」

彼が一気に横たわっていた3人を氷でこちら側へ引き寄せた。
私は戦闘態勢に入りながら、目の前のヒーロー殺しを見据える。

「轟くん、奏出さん!そいつに血イ見せちゃ駄目だ!たぶん血の経口摂取で相手の自由を奪う!」
「それで刃物か。彩海、お前は3人の手当てを頼む」
「でも……」
「いいから!はやくしろ!!」

ヒーロー殺しが放ったナイフが彼の頬をかすった。
私は態勢を低くし、プロヒーローのもとへと寄り添う。

「君は……確か人魚の……」
「説明は後です。私の声を聞いて」

私は癒しのメロディを奏でる。
疲労回復・治癒促進の効果があるヒーリングメロディ。
治癒促進といっても止血ができる程度の微々たる効果しか得られないけれど。
今は傷口の止血だけでも行わなければ。

「彩海!!避けろ!!」
「!!」

彼の声に気が付き前を見れば、こちらに向かってナイフが飛んできている。
咄嗟にプロヒ−ローを端へと突き飛ばした。

「ハア……傷が塞げるとは厄介だ」

避けきれなかったナイフが左の太ももに突き刺さった。
足に伝う血が地面にも数滴したたり落ちていく。

「奏出さん!?」

私が作り出した1匹の水龍が、ヒーロー殺しを襲う。
だがそれに怯むことなく相手は軽々と身を翻した。

「ハア……そんな子供だましは効かな……!?」

水龍を瞬時に針状に細く鋭い水流に変化させる。
まるで乾山のように放射線状に伸びる水に、ヒーロー殺しは後ろへ飛び間合いを取った。

「お前も……イ……」

最後まで言葉を聞くことなく、大量の水が渦巻く水牢にヒーロー殺しを閉じ込めた。
どうにか動きを封じることに成功する。

「すごい……さすが奏出さん……!」
「焦ちゃん、早く凍らせて!痛みで制御が上手くできな……」
「彩海!!」

突然だった。
体が崩れ落ち、個性の制御ができなくなった。
崩壊した水牢からヒーロー殺しが勢いよく飛び出てくる。

「甘いぞ女。操っていた水の中にわずかにお前の血が混じっていた」
「たったそれだけの血で……!」
「ハア……雑念が混じってるからこうなる」

ヒーロー殺しは私を見据えて言う。


「余計な感情を捨てろ、女」


その一言は、とても奥深くへと突き刺さる。

ヒーロー殺しが拘束されるまで身動きの取れなかった私は。
緑谷くん、飯田くん、そして彼が奮闘するその雄姿を目に焼き付けることしかできなかった。


hit the lights

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