"あんたは色んな人を虜にしてるってことは間違いないと思う。けどそれは決して、メリットばかりじゃないからね"
親友の言葉を、ぼんやりと思い出していた。
「彩海ちゃんの個性って素敵だね!人魚姫みたい!」
「そ、そうかな……」
「そうだよ!羨ましいなあ!」
父と母の個性を綺麗に両方とも受け継いだ私。
華やかな個性だからか、みんなから羨望の眼差しで見られることが多かった。
「何が人魚だよ!気持ちわりぃ!」
けれど、それを快く思うものばかりではなかった。
面白く思わない子たちから、よく理不尽な暴力を受けることもあった。
「やだ!やめてよ!」
「お前人魚だろ!なら、こんなとこでも余裕だろ!」
それは真冬の寒い時期。
いつもいじめていた男の子たち3人組は、私を公園まで連れてきた。
無理矢理腕を引かれたその先は、結構な深さがある大きな池だ。
「早く泳げよ!人魚なんだろ!」
「やめてよ!こんな寒いところやだよ!」
私の静止も空しく、男の子たちから鞄やコートがあっけなく奪われる。
「せーのっ!」
元気のいい掛け声と共に、背中に大きな振動を感じる。
そのまま私の身体は水面に向かって投げうたれた。
「いやっ……!たすけてっ……!」
突然体中を襲う、凍てつくほど冷たい感覚。
身体が震え、個性を扱うどころではなかった。
「どうしたんだよ!早く人魚になれよ!」
「やっぱり人魚なんて嘘なのかよ!」
「ちが……個性がつかえな……!」
池から上がろうとする私を、3人の男の子たちはこれでもかというぐらい強い力で阻止してくる。
もがく拍子に大量の水を飲み、私の息はどんどん息は苦しくなった。
「も……だめ……」
半ばあきらめかけた時だった。
「わああ!なんだこいつ!!!」
「やべえ!!!逃げろ!!」
男の子たちは悲鳴を上げてその場を去っていった。
視界の端に、鮮やかな色の炎が少し見え隠れしている。
その光が消えたと思ったら、見慣れた男の子が顔を出した。
「焦……凍……ちゃん……?」
「彩海!!」
彼は私を急いで引き上げる。
彼の左手が冷えた私の身体を暖めてくれた。
「焦……ちゃん」
「もう少しだ!待ってろ!」
私を抱き寄せる、彼の体温が肩から伝わる。
それはとても暖かくて。
とても心地よくて。
まるで夢見心地のような感覚に、不思議と先ほどの恐怖心は吹き飛んで行った。
「焦凍くん、ありがとな。彩海を助けてくれて」
私を急いで家まで送り届けてくれた彼に父はそう言った。
ソファに腰掛けながら彼は少し嬉しそうに口元を綻ばせて言った。
「これからも、彩海は俺が守るよ」
その日を境に、彼は本当に私を守ってくれた。
私より1つ下の男の子。
いつも悲しそうな目をしている、泣き虫な男の子。
弟みたいに、私が守らなきゃって思ってた。
けど、それは全然違ったんだ。
「焦ちゃん」
あの日から、君は私のヒーローになった。
君みたいに誰かを救いたいと、そう思うようになった。
君が私を救い出してくれたあの日から。
「なんだよ、彩海」
私は君に、恋をして。
「……なんでもない!」
私は君に、憧れを抱いている。
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