彼と付き合い始めてしばらくたち始める。
周囲の人間の騒ぎもだんだん落ち着きを見せてきて、平穏な日々に戻ってきたところだ。
「やっぱり外れだ」
私は玄関前で外の様子を眺めていた。
外では鈍色の空から大粒の雨が降り注いでいる。
天気予報は晴れの予報だったからか、何人かの生徒たちは濡れながら帰っている。
そんな中、玄関で立ちすくんでいる見覚えのある姿が目に入った。
「爆豪くん」
私の声に、爆豪くんはこちらを向く。
そして私とわかると、すぐに眉間にしわを寄せた。
「この雨、多分しばらくやまないよ」
「は?」
「個性上、水を操るからかな。なんとなくわかるんだ」
爆豪くんの小さな舌打ち。
どうやら傘がなくて困っているようだ。
「よかったら入ってく?」
「ああ?」
「駅まで行くんでしょ?一緒に帰ろうよ」
「……いいのかよ。轟のヤローは」
「今日は一緒に帰る日じゃないの。1人だから大丈夫だよ」
爆豪くんは小さくため息を1つついた。
そしてゆっくりと私の傘の中に入ってくる。
「……なんだよ、その顔」
「いや、てっきり爆豪くんならそんなもんいらねえ!とか言って濡れて帰ると思ったから」
「そう思ってんなら最初から誘うな」
ぶっきらぼうに私から傘の柄を奪う。
そして何も言わずに歩き始めた。
私はおいて行かれないように少し早歩きで爆豪くんについていく。
「爆豪くん、あのちょっと早い……!」
「ああ?てめぇが遅いんだろ」
「まあ、そうなんだけど……待ってってば!」
咄嗟に私は傘の柄をつかむ。
必然的に爆豪くんの手の上に私の手が重なる。
その感触に驚いたのか、爆豪くんは足の動きを止めた。
「ご、ごめん。つい……」
私は手を離す。
"何してんだてめぇ!!"
そんな風にきっと罵声が飛んでくるに違いない。
そう思い瞬時に身構えた。
「……爆豪くん?」
けれど一向にその声は降りかかることはなく。
目の前の爆豪くんは何も言わずに私を見つめたままだ。
「行くぞ」
今度は私のスピードに合わせたゆっくりとした歩調で。
爆豪くんは私なんて見向きもせずに、歩き出す。
あれ、なんだろう。
前にもどこかで同じようなことがあった気がする。
気のせいだろうか。
傘に打ち付ける雨音に耳を傾けながら。
この既視感にについて考えてながら。
ただただ、黙って駅までの道のりを歩いた。
deja vu
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