喧嘩をしてから幾日。
私と彼は口を利かないまま、期末試験に突入した。
筆記試験も終わり、残すところは演習試験だけだ。
「彩海、準備終わった?」
「うん。今行く……」
私はコスチュームを身にまとう。
姿見に映る自分を眺めると自然とため息がこぼれた。
"お前のコスチューム……変更できないのか?"
彼の言葉が頭をよぎる。
"露出が高い。あんなんじゃすぐに怪我して当たり前だ"
本当はわかってる。
私を思って言ってくれてることなんだって。
彼の思いやりは素直に嬉しい。
それなのに。
"いいから俺の言うとおりにしろ"
その物言いが、とても癪に触って仕方ないのだ。
イラつく気持ちをどうにか抑え込みながら指定された演習場へ向かう。
するとそこにはいつも以上ににぎやかな人だかりが見えていた。
嫌な予感がする。
すごく、嫌な予感が。
「奏出さん!」
「緑谷君、どうしてここに……」
ほら。この展開。
前にも似たようなことが確実にあったもの。
「演習試験の内容を今回から変更しちゃうのさ!」
やっぱり。
集められた1-Aと2-Aの生徒たちに、校長先生は説明を始めた。
これからは対人戦闘・活動を見据えたより実践に近い教えを重視する。
そのため例年通りのロボットとの対戦は実用的ではないと判断したそうだ。
1-Aの子たちは二人一組で教師一人と戦うらしい。
「2年生たちの試験内容を説明するよ」
校長先生は私たちに向き直り、説明を付け加えた。
「君たちにも二人一組で教師一人と戦ってもらう。けれどそれだけでは1年生と内容が変わらないからね。少し難易度を上げることにしたのさ」
「難易度?」
七絵が怪訝そうな表情を浮かべて言葉をこぼす。
その様子をみて、相澤先生が気怠そうに話をつないだ。
「敵役の教師が1年2人組を人質に取る。人質を救って逃げきるか、敵を倒せば合格だ」
「……!!」
2年生全員は息をのむ。
格段と上がった難易度。
相手はプロヒーローの教師たち。
戦うことでさえ大変なのに、人質がいるとなるとはるかに難易度が上がる。
「じゃあ対戦する組み合わせを発表するぞ。尚、人質役は同じく教師と対戦する1年生のペアがそれぞれ務めることとする。じゃあ発表していくぞ……」
思い返せば、私は勘が鋭い方だと思う。
何かと昔から、なんとなくこうなるかなって予感が的中しやすい。
それは特に、悪い時にこそそうだ。
まさしく今、私の中の勘が言っているんだ。
きっとそうなるんじゃないかと。
「画色と奏出がペアで――」
相澤先生の声が響く。
仲の良い七絵とペアを組むことになるとは予想外だ。
「俺とだ」
ああ、やっぱり。
「彩海……?」
だって、相澤先生と対戦予定の1年生は。
「轟と八百万が人質役な」
予感的中。
「本当、あんたってなんか持ってるよねえ」
七絵は乾いた笑いを浮かべる。
「……私もそう思う」
「あんたの気持ちもわからなくもないけどさ」
七絵は私の右腕を突然引いた。
必然的に彼女の方へと視線を向ける形となる。
「ヒーローになるためよ。今は全力でやるよ」
「……うん」
本当、私はいい友達を持ったと思う。
「頑張ろうね、七絵」
「当たり前でしょ」
頼もしい、誇らしい彼女。
切磋琢磨しあえる、大切な存在。
彼女と一緒に戦える。
そう思うと不思議と力がみなぎってくる気がした。
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