大噴水を直撃した先生の体は大きく宙に大きく舞った。
フラッシュライトを間近でくらった先生はきっと、今は目がくらんでいるはず。
今がチャンスだ。
今しかない。

「耳をふさいで、七絵!!」
「えっ!!それってまさか……」

私はイヤーマイクの出力を調整する。
目を閉じて深く酸素を吸い込んだ。


"彩海の歌を聴くと幸せな気持ちになる。だからこれからも歌ってくれ"


不思議だよね。
何回喧嘩をしたって。
私を励まし支えてくれるのは。

いつだって、焦ちゃんなんだ。


「――――――……」


大音量で奏でる、ララバイ――子守歌。


「あ、ぶな!!」

歌い終えると七絵は大きなマットを生み出し、相澤先生を見事受け止めた。
そして事前に渡されていた教師捕縛用の手錠を両手にかける。

「あんた、歌……」

七絵は驚いたようにこちらを見た。
私はなんだか照れくさくて、わざとらしくおちゃらけて見せた。

「どう?上手だった?」
「耳塞げって言ったのはあんたでしょ。必死で聞こえないようにしてたからわかんないわよ」
「あ、そうだった」
「けど……」

七絵の表情が驚きから優しい微笑みに変わっていく。

「きっと綺麗で優しい音色だったと思う」

なんて嬉しい言葉なんだろう。

「七絵……」
「ほら、先生には手錠をかけたんだから早く2人のことも起こしてあげなよ」
「あ、うん」

促され、私はゆっくりと彼のもとへと歩み寄った。
規則正しい寝息をたてて眠る彼の姿に、ふと昔の記憶がよみがえる。

色んな彼を見てきた。
幼いころに比べて背丈も伸びた。
顔つきだってずいぶん男らしくなった。
それなのに。
どうしてだろう。

この寝顔だけは、幼いころからずっと変わらないの。

「――――……」

軽快な目覚めのメロディー。
私の歌声に、相澤先生、八百万さんが目を覚ましていく。

「彩海……?」

そして最後にゆっくりと彼が顔を上げた。

「焦ちゃん、おはよう。今から手錠を解くから待ってて」
「……」
「はい、取れたよ。……焦ちゃん?」
「……」
「しょ、焦ちゃん!?」

まるで幼子のように、彼は私の肩に顔をうずめて再び眠りにつきはじめる。
突然の出来事に動揺し、どうすればいいかわからない。

「奏出。歌声の個性を制御出来るようにしろ。効きすぎだ」
「え、あの……えっと……」
「個性を増強するイヤーマイクを使って歌ったんだ。轟がこうなるのは仕方がないだろ」

混乱して、先生の言っている意味が分からない。
先生はそんな私を見かねたのか、ため息を1つついて言った。


「お前の歌声の個性は、お前に魅せられている奴ほど強く効く。そういう個性だろ」


相澤先生の言葉に、七絵は大きく噴き出す。
私は襲い来る羞恥心をうまく処理できず、そのまま硬直してしまった。

sleeping face

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