「つ、ついた……」
宿泊施設についた私は地面に膝をつく。
息を整えながら顔を上げれば、一番最初に出会ったピクシーボブが覗き込むようにこちらを見ていた。
「ねこねこねこ……やっぱりあなたが1番乗りだったね」
独特の笑い声を上げながら、軽々と私の手首からリストバンドを外した。
どうやら他者が手にかければ取れる仕組みになっているようだ。
「思ってたよりも強かったから、明日はもっとスパルタにしちゃう」
「望むところです」
「ふふ、その勇敢な表情は父親譲りだね!」
私は立ち上がると、制服に着いた土ぼこりを払った。
すると遅れて1-Aの面々も到着し始める。
「彩海……」
「お疲れさま、焦ちゃん」
彼は肩で息をしながらこちらを見る。
その横ではほぼ同時に到着した爆豪君が鋭い目つきでこちらを捉えていた。
「ねこねこねこ!ハンデがあってもやっぱり2年生!あなたたちよりは経験豊富なようね!いろいろと!」
「ピクシーボブ!その誤解を招く言い方はやめて!」
「あれ、意外と純情?まだまだお子ちゃま?」
「余計なお世話です!」
興奮し思わず個性を使ってしまったようだ。
気が付けば、空中にいくつかの水泡が漂っている。
それを見て、近くにいた小さな男の子が驚いたように目を見張った。
「もしかして、君も水を使えるの?」
男の子は私の問いかけを無視し、そっけなく眼を逸らす。
その態度はまるで話しかけるなと言っているようにも見えた。
何か気に障ることを聞いてしまったのかな。
「テメェには負けねえぞ!ギョジン!」
傍らでは爆豪君が私に大声で威嚇する。
あまりの迫力に、思わず肩をすくめた。
「爆豪君。せっかくの機会なんだから勝つとか負けるじゃなくて、一緒に切磋琢磨したいな……なんて」
「うるせえ!なれ合ってんじゃねえよ!」
その言葉は私の胸に突き刺さる。
薄々は感づいていたけど、ここまで嫌われていたとは思わなかった。
正直ショックだ。
「気にしないでください奏出さん。かっちゃんは誰に対しても大体こんな感じだから……」
「うるせえぞデク!殺すぞ!」
その暴言に緑谷君は押し黙る。
私は爆豪君にばれない様に、小さくため息を漏らした。
「彩海」
私の表情に気づいたのだろうか。
「焦ちゃん」
彼は私の肩を叩く。
その何気ない気づかいが嬉しくて、自然と口元が綻ぶ。
「てめぇら、いちゃつくんなら他でやれ!」
すると突然、爆豪君がこちらに向き直り、個性で威嚇した。
その態度に私は萎縮してしまう。
「ごめんなさい……」
「おい、彩海」
私は彼の静止を振り払い、その場を離れた。
初日からこんな調子では先が思いやられてしまう。
「はあ……」
前途多難な状況に、再び小さいため息を漏らした。
sigh
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