藍色の夜空に立ち上る赤。
あの炎を見ると、胸が締め付けられる。
恐怖心よりも勝るのは既視感と悲愴感。


"この雨、多分しばらくやまないよ。よかったら入ってく?"


頭によぎったのは以前の帰り道の出来事。
胸がざわついたあの日のことが、なぜか頭に浮かんだ。


「結構近くまで来たな……」

どのくらい進んだのだろうか。
どうにかここまで敵に遭遇することはなかった。
けれど油断してはいけない。
必ず炎の付近に、発火させた"個性"がいるはずだ。

「……あれは!」

目の前に見えたのは、木陰に座り込む1人の男の子。
そして、横たわる女の子の姿があった。
男の子は私に気が付いていないようだ。

「ねえちょっと……!」

話しかけようとした瞬間。
私は咄嗟に木陰に身を隠す。
敵と思われる人物が2人、話しながら歩いている姿が目に入ったからだ。
ここからでは何の話をしているかはよく聞こえない。

どうにかして近づきたい。
けど、下手に動けば隠れている子たちにも被害が及ぶ。
今はここで様子を伺うのが賢明か。

「……!!」

私は男の子の異変に気が付いた。
様子を伺っていたと思いきや、慌てて顔を逸らした。
口を両手で覆い、身体を小刻みに震わせている。
そして、その先の敵は男の子の方をじっと眺めていた。

やばい。気づかれたんだ。

敵は男の子の方へと体を向ける。
そして左手をゆっくりと翳した瞬間。

「!!」

私は瞬時に飛び出して、敵に向かって水を放った。
不意を突かれ、敵は後ろに後ずさる。

「隙を見て逃げて」

小声で呟き、男の子の横を通り過ぎる。
木陰を隠すように、私は目の前に立ちはだかった。

「知ってるぜこいつ!!誰だ!?」

後ろで喚く、タイツスーツの敵。
そしてその前では怪しげな笑みを浮かべる男。

「奏出彩海か」
「私のこと知ってるのね」
「まあな。有名人だろ、人魚姫。」
「そう。じゃあ個性も把握済みってわけ?」

鋭い水流を放射させるように相手に放つ。
相手は軽々とそれを往なした。

「あれ?まだこんだけですか」
「!?」

また新たに現れた、セーラー服の敵。
少女は私を見るなり、眉をひそめた。

「あ、人魚の人だ。私この人なんとなく嫌いです」
「イカレ野郎。血は採れたのか?何人分だ?」
「一人です」

まるで私などいないかのように平然と繰り広げられる会話。
私はゆっくりと隙をうかがう。

「うるせえな、黙って……」

今だ。

「!!!」

3人の足元から、突き上げる様な噴水を湧き起こす。
敵の視界がそれた瞬間、自分の身体を水で包み込んだ。

「おい、荼毘!」

一気に間合いを縮めた私は、荼毘と言われた男を水の中に閉じ込める。
残りの2人がこちらに向かってくるのをまた新たな噴水で防いだ。
荼毘は1つ大きな泡を口から吐き出す。

「苦しいでしょう?解放されたければ、ここから牽きなさい」

目の前の荼毘は笑う。
その笑顔に、背筋が凍りつくほどの悪寒が走る。
しまった、と思った時にはもう遅い。

「!!!」

目の前に現れた大量の蒸気と風圧に、体が吹き飛ばされた。
地面に手を付き体勢を整える。

「お前ね。あの火をだしたのは」

荼毘は何も言わずにただ不気味な微笑みを浮かべている。
私は静かに息をのむ。

迫りくる胸騒ぎが収まる気配は、一向になかった。

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