3人の敵に、私1人。
そして向こうは私の個性をある程度把握している。
圧倒的不利な状況に置かれているのは、一目瞭然だった。

「ねえ、本当にやるの?私この人嫌いです」
「俺は結構好き!」

敵は私を見据えてなにやら話をしている。
荼毘だけは話に加わらず、じっと私を見据えていた。
その態度に、私は更に体勢を低くする。

「……!!」

しかし、目の前の視界は遮られた。
先ほど別れた3人と1人の敵が空から落ちてきたのだ。
突然のことに私は目を見開く。

「彩海!?お前どうして……」
「焦ちゃんこそ、どうしてここに!?」
「爆豪と常闇がこいつに攫われて、追ってきた!」

彼らの下敷きになっている敵は地面に俯せている。
けれどその場に爆豪君達の姿はない。
きっとこいつの個性で、どこかに隠されているのだろうと瞬時に理解した。

「Mr.、避けろ」
「みんな避けて!!」

荼毘が左手を構えたのを見て、私も瞬時に左手を構えた。
一瞬、自分のモーションが遅れたせいで緑谷君と障子君に火の粉が降りかかってしまった。
しかし生み出された炎を相殺することにどうにか成功する。

「お前の相手は私よ!!」
「彩海!!」

隣で彼が私の名前を呼んだ。
しかしその制止を振り払い、私は一体の龍を荼毘に向けて放つ。

「無駄だって」

パンッ。
甲高い音とともに、再び沸き起こる風。
冷や汗が頬を伝う。
目の前の荼毘はまた笑った。
胸騒ぎがどんどん激しくなる。

この既視感はなんだ。

互いの個性を相殺するなんて、普通は困難だ。
個性を発動するタイミング、発生機序、性質。
全てを熟知していないと、必ずどちらかの力がわずかながらにも勝ってしまうはずだ。
なのに、どういうこと?


私と荼毘は先ほどから3度も互いの個性を打ち消している。


「お前は……誰なの?」
「心外だな、奏出彩海」

きっとこいつは分析力に長けているんだ。
私の個性を調べ上げ、自分の個性のタイミングを合わせているんだ。

でも、どうして?
どうして、私が荼毘の個性を打ち消せたの?

「……どう、して?」

混乱して冷静に考えられない。
思考回路がショートしている。


私は過去に、荼毘に出会っている。


仮説を肯定している自分と否定している自分がいる。
そう考えたくない。きっと違うはずだ。
けれど考えれば考えるほど、仮説は確信に変わっていく。

「三人とも逃げるぞ!!」

その声に、思わず顔を上げた。

「右ポケットに入っていたこれが常闇・爆豪だな、エンターテイナー」

障子君は左手を突き出す。
それを合図にしたかのように緑谷君と彼は途端に逃げ出すように走り出した。

「おい彩海!!」

しかし、それとは反対に私の身体は瞬時にエンターテイナーに向かって飛び出していた。

「引いちゃだめ!!」
「これはこれは。勘のいい御嬢さんだ」

エンターテイナーに突き出した左手。
その指先から湧き出るはずの水は一向に現れない。

「だからダメだって」

私の左手は、荼毘の右手によって受け止められている。

「俺とお前は戦えない」

その言葉に、私は目を見張った。

「嘘……そんなはずは……」
「彩海!!!」

遠くから彼の声が聞こえる。
けれど私は目の前の荼毘から視線を外すことが出来ない。

「お前が今思っている通りだ。奏出彩海」
「!!」

荼毘と私の距離が埋まる。
なぜか触れ合っている、私たちの唇。

頭の中では大きな雨音が響いている。


"そういうところ……大嫌いだ"


懐かしい、聞き覚えのあるフレーズ。
私の中の断片的な記憶が、少しずつ蘇っていくような気がした。


for the second time

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