私が投げ出された場所は、ビルの外側。
ちょうど敵の死角になっている場所だった。
「お父さん……!!」
父がわずかな力を振り絞って私を助け出してくれた。
通りざまに見えたあの微笑みが頭に焼き付いている。
「行かなきゃ……行かなきゃ……!」
立ち上がろうと必死にあたりのものにしがみつく。
何度も転びながら、やっとの思いで立ち上がる。
けれど一歩を踏み出すことが出来ず、その度に地面に崩れ落ちた。
「動け……」
お願いだから。
「動いてよ!!!!!」
私の悲痛な叫び声が響く。
なんて情けないんだろう。
今の私には大切な人たちを助け出すことは出来ない。
自分の非力さを痛感し涙が溢れ出る度、地面に小さな染みが浮かんだ。
「誰か……」
昔からそうだった。
「助けて……」
いつだって、どうしようもなく途方に暮れている私の元には。
赤みを帯びた、明るく優しい光が差しこむの。
「彩海!!!」
どうして君は。
「焦……ちゃん……」
いつも私を助けてくれるの。
「彩海!!」
力強く、優しい抱擁。
ああ、間違いない。
彼がいる。
私の待ち望んだヒーローが、ここにいる。
「焦ちゃん…お父さんが…お父さんが!!!」
「今はここを離れるぞ!」
彼は私を抱き上げる。
路地の先には八百万さんが先導を切るように手を上げて待ち構えていた。
「待って!!お父さんがまだ!!!」
「おじさんがこんなところでくたばるわけねえだろ!信じろ!!」
「でも行かなきゃ……私のせいでお父さんが……!!!」
「彩海!!」
彼は驚くほど大きい声で私の名前を叫ぶ。
その迫力に負け、思わず押し黙った。
「これ以上……離れんな……」
私はバカだ。
弱くて、ただ騒ぎ立てることしかできなくて。
「……っ」
こんなにも大切な人たちに心配かけて、苦しめていたことにも気が付かずに。
「ごめんなさ……い」
まるで喉の奥に物がつっかえているよう。
やっとの思いで声を出す。
初めて見た今にも泣き出しそうな彼の表情に、強く胸が痛んだ。
気が付けば私は彼の頬に手を伸ばしていて。
「焦ちゃん……」
彼の瞳から溢れだしそうな涙を、そっと掬い上げた。
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