「奏出さん!」

オールマイトが無事に敵を倒し、騒動が一段落したとき。
彼が連絡を取っていた緑谷君たちと合流した。
私を目にした緑谷君や飯田君は心配そうな表情を浮かべている。

「爆豪君!!」

そこには爆豪君もいた。
先ほど私を助けてくれた爆豪君。
無事な姿を見て、本当によかったと心から思った。

「焦ちゃんありがとう。もう降ろして大丈夫だよ」
「お前立てるのか?」

彼はゆっくりと私を降ろしていく。
捕まっていればどうにか立つことは出来そうだ。
彼にしがみついていると、それに気づいたのか私の腰を支えるように腕を回してくれた。

「お前、あの後何をされた」

爆豪君がぶっきらぼうに言い放つ。
一見すれば棘のある、責めるような言葉。
けどきっと、これは爆豪君なりに心配してくれているんだろう。

「……彩海?」

すぐに答えない私を不思議に思ったのか。
彼は心配そうにこちらを覗き込む。

「……ごめ、」

言えない。
いや、言いたくない。
彼に嫌われてしまうんじゃないか。
彼に軽蔑されてしまうんじゃないか。
そんな不安感が押し寄せてくる。

自然と彼を掴む手の力が強まった。

「奏出さん。大丈夫ですわ」

優しい声音に、思わず顔を上げる。

「今無理をして答えなくても大丈夫です。きっと心の整理も必要でしょうから」

八百万さんの優しい言葉。
思わず涙が出そうになったのをどうにかこらえた。
声を出すと涙ぐんでいるのがばれてしまいそうで、首をゆっくりと一度縦に振るのが精一杯だ。

「と、とにかく!かっちゃんも奏出さんも警察に連れて行かないと!」

話題を逸らそうとしてくれたのだろう。
緑谷君が少しだけ声を張り、辺りを見回した。
緑谷君の提案に賛同したかのように飯田君ともう1人の男の子は警察を探しに走り出す。

「彩海」

彼が私を呼ぶ。
そして体を密着させるように、力強く私を引き寄せる。

「……焦ちゃん」

鼻に掠める、嗅ぎなれた落ち着く香り。
ああ。夢じゃない。
彼がここにいる。
彼が傍に。私は彼の腕の中にいる。
求めていたぬくもりに、体が震えだす。

「後で全部話すから」

勇気を出して、彼の瞳を覗き見た。
綺麗なオッドアイ。
その瞳に写り込む私が見える。

「ああ」

緊張の糸が切れたかのように。
自然と私の口角が上がった。

「おい!連れてきたぞ!」

男の子が手を上げてこちらに向かっている。
その後ろには飯田君と警察を引き連れている。
警察官は、爆豪君と私をみるなり目の色を変えた。

「爆豪君に奏出さんだね?」

私と爆豪君は何も言わずにただ首を縦に振った。

「とりあえず病院に行こう。この後は我々に任せ……」
「あ、あの」

私は警察の言葉を遮る。

「父は……ポセイドンは今……!!!」
「大丈夫。ポセイドンは無事だよ。病院に搬送されて治療を受けている。命に別状はないそうだよ」

その言葉に安堵し、我慢していた涙が一気に溢れ出した。

「よかった……よかった……!!」

先ほどの力なく倒れる父の姿が脳裏に浮かぶ。
もう父は起きてくれないのではないか。
いつもみたいなあの明るい笑顔に会えなくなるのではないか。
そう思うと本当に怖くて、怖くて、たまらなかった。

「彩海。行くぞ」
「……うん!」

涙はまだ止まらないけど。
少しだけ、いつもみたいな笑顔が浮かんだ気がした。

feel relieved

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