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美琴ちゃんも帰り、私は食器を片づけていた。
先ほどまでの時間を思い返し、自然と笑みがこぼれる。

「美琴ちゃん、すごくいい子だったなあ」

ずっと笑いっぱなしだったためか、痛む頬を摩ると、窓ガラス越しに映る自分と目があった。

(やっぱり似てるよ、わたしたち)
(えー、そうですか?)
(うん、共通点とかたくさん見つけちゃったよ)
(六花さんと私、そんなに共通点ありますか?)

「あるよね、共通点」

先ほどの会話の中の問いかけを思い返す。

「美琴ちゃんは、まだ知らないんだね」

知らないほうがいいことだもの、ね。
そう呟くと同時に、玄関のドアが開く音が響いた。
窓ガラスにドアを開けた人物が反射して映し出される。
自然と目が合い、振り返ることなく話しかけた。

「どうしたの?こんな遅くに」
「いえ、たまたま近くを通りかかったものですから」

部屋に上がった人物は、丁寧な口調で語りかける。

「だから、そんな恰好で出歩かないでって、お願いしたはずなんだけど」
「すみません。ですが、私にはこれしか支給されていないのです。お姉様」

露出の多いワンピースを身に纏っている少女は、どこか形式ばったような軽い会釈をした。
その様子から悪びれている様子は感じられない。

「本当、私そっくりね」
「その質問は、はたして意味があるものなのかと聞き返してよろしいでしょうか」
「ううん、特に意味はないけど……」
「仕方ないですよ、だって……」

私が窓ガラスから視線を移すとほぼ同時に、少女は口を開く。

「わたしは、お姉様から作られた、クローンですから」

もう1人の私がそこにいた。