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「帝督ー。こっちとこっち、どっちがいいかな?」
「あー…知らねえ」
「ちょっと、ちゃんと聞いてるの?」

私は隣で面倒くさそうに歩く幼馴染、垣根帝督を睨みつけると、手に持っていた商品をそっと棚に戻す。
この間の健康診断の後、そのまま一緒に眠ってしまって買い物に行けなかったので無理やりこの男をつれて休日に出掛けたのだった。
帝督はつまらなそうに大きな欠伸をする。

「ねえ、帝督。私に似合う髪飾りを選んでほしいんだけど」
「ああ?どれも変わんねえよ。豚に真珠って言葉知ってるか、お嬢様」
「ええ、知ってますとも第二位様」

私は苛つきながら雑貨屋を後にする。
帝督はふらふらとほかの店を横目で見ながらも私の後をついてくる。
久しぶりに2人で出かけられる、なんて浮かれてたのは私だけみたいだ。
ため息をついて顔を上げると、1つの綺麗な置物に目を引かれた。

「わあ……綺麗」

そこには雪の結晶をあしらった小さなスノードームが置かれていた。
光を反射するのか、中の結晶がキラキラと輝く。
見とれていると、後ろから音を立てて頭をたたかれた。

「お前、そんなのがほしいのか」
「うん、だってすごい綺麗なんだもん。いいなあ。けど値段が……」

値札を見て、私は眉間に皺を寄せる。
今日の持ち合わせでは買えないことはないが、この小さいスノードーム1つにここまで奮発するのは惜しい、そう思えるような値段。
首をひねっていると、帝督が私の頭の上から商品を取り上げて言った。

「やめとけ。こんなのお前には似合わねえよ」
「わかってますよー。ちょっと気になっただけじゃない」

私はその商品に後ろ髪をひかれながらも店を後にした。

「帝督、私クレープ食べたい!」
「太るぞ、豚お嬢様」
「うるさいわよ天使様」
「お前、喧嘩売ってんのか」
「お互い様じゃない」

憎まれ口をたたきながら、私はクレープの屋台へと足を運んだ。