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俺たちは先ほどからずっと六花の後をつけていた。

「上やん知り合いなん?なんでもっと早う言ってくれへんの!」
「いや、だってお前の運命の人が六花だなんて思わなかったし……」

こそこそと後を追う俺らは、はたから見たら立派な不審者だ。
周りの通行人は怪しそうに俺たちを見て過ぎていく。

「ちょっとあんた、何してんのよ」
「御坂!?」

いきなり誰かが前に立ちはだかったかと思うと、以前に対決した御坂美琴が仁王立ちをしてそこに居た。
まるで汚いものを見るかのような目でこちらを見つめている。

「さっきからこそこそと…あんた、何を追ってるわけ?」
「いや、これには深い事情が……」
「あれ?六花さんじゃない」
「御坂、お前も六花と知り合いなのか?」
「あんたも?」

俺たちは六花の見えない死角からこそこそと様子をうかがう。

「って、なんであたしもこんなことしなきゃいけないのよ!」
「いいだろ、あとで事情は話すから」
「どうせくだらないことなんでしょうけど」

青髪を見れば頬を赤く染めながら、いつも以上にだらしない表情をしていた。
土御門は若干引きぎみで、そんな青髪を見つめている。

「ああーええなあ、あのクレープになりたいわあ、僕」
「そうなったら青髪はあの子と話すことなく一生を終わってしまうぜよ」
「あの唇に触れられるなら本望やでー」
「やめろ青髪。御坂が引いてる」

六花は嬉しそうにクレープを持ってホストの座るベンチに腰かけた。
いただきます、なんて言いながら口を開けた途端、隣のホストがクレープを横取りするかのように食らいついた。
六花は口を開けたまま目を丸くさせて、そのホストを睨みつける。

これはどこからどう見ても、立派なカップルのやり取りにしか見えない。

「六花さんの彼氏ってあの人なんだ」
「え、御坂。六花って彼氏がいたのか?」
「彼氏とは言ってなかったけど、一緒に住んでる男の人がいるって言ってたわ」
 
御坂のその一言を聞いて、隣の青髪は肩を震わせて泣いていた。
俺と土御門は笑いながら青髪の肩をたたく。

青髪の失恋が決定したということで、俺たちは尾行をやめて近くのファミレスへと向かうことにした。

「御坂、お前も行くか?」
「いや、いいわ。なんか大体察しついたし」

じゃあね、と御坂はスカートを翻して俺たちの元から去って行った。

「……やっといったか」
「え?誰が?」
「お前には関係ねえよ」

ホストの男が俺たちの背中を睨みつけていたことには、誰も気づかないまま。
俺たちはその場を後にした。