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「美琴ちゃんの寮、すごくおしゃれなのね」
「まあ、なんもないですけどね……」

私は今日、美琴ちゃんの寮へ遊びに来ていた。
ルームメイトである白井黒子ちゃんとも友達になって(なんだか威嚇されている気もするけど)、仲良く3人で談笑して、楽しい時間を過ごしていた。

「蒼南さんは、寮には入っておりませんの?」
「うん。私は自分でマンションを借りてるの。なんだか寮はなじめなくって……」
「まあ、確かにいろいろな規則で縛られる生活は、自由とは無縁ですものね」
「そんなに厳しいんだ、ここの寮則……」

美琴ちゃんと黒子ちゃんは苦笑しながら2人で目を見合わせていた。
どうやら、今までに辛い思いを何度かしてきたようだ。

「でも、黒子ちゃんはすごいね。風紀委員(ジャッジメント)の仕事もこなしているなんて。私には到底無理だなあ」
「いえ。慣れれば案外できてしまうものですわ」
「でも不規則な生活で大変そうよね、黒子って。あんまり無理するんじゃないわよ」
「お姉さま……!!」

黒子ちゃんは美琴ちゃんが大好きなんだろう。
美琴ちゃんの言葉一つ一つで一喜一憂する黒子ちゃんの姿がなんとも可愛らしい。
仲睦まじいやりとりに、思わず微笑んだ。
和やかな雰囲気を壊すように、黒子ちゃんの携帯が大きく鳴り響く。

「初春!?どうしたんですの?えっ……佐天さんが!?今すぐ行きますの!」
「どうしたの?!」
「すみませんが、ちょっと緊急事態ですの。申し訳ないですが、お姉様と蒼南さんはここでお待ちになって……」
「ちょっと黒子!私も連れて行きなさい!」
「な、なに?どうしたの?」
「ちょ、ちょっと!このままじゃみんな……!!」

次の瞬間、私は美琴ちゃんを掴んだまま見知らぬ場所に飛んでいた。
やってしまった。
黒子ちゃんの表情は引きつっている。

「……私、初めて空間移動(テレポート)しちゃった」

そこは路地裏。
目の前にはセーラー服の少女が不良たちに囲まれている。

結構、やばい雰囲気かもしれない。