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「ああ?なんだお前ら」
「風紀委員(ジャッジメント)ですの。暴行容疑で、あなたたちを拘束いたします」
「おーこわいこわい。お前らあれだろ、常盤台の超電磁砲と空間移動、だろ?」

この不良のグループは、いつも相手にしてるやつらとはどことなく違う。
いつもならビビって逃げ出したり、降参してきたりするのに。
余裕の表情というか、まったくあたしたちに怖気づいているという感じがしない。

「御坂さん、白井さん……」
「初春さん!?」

私たちの後ろから、新手の不良たちが回り込んできた。
初春さんを人質にとって、私たちの逃げ道をふさいでいる。
完全に道は塞がれた。

「俺の能力はちょっと特殊な能力でな。感覚同調(シンクロセンス)っていうんだけどよ。今人質にとってるこの女も、向こうの造花のみたいな女も、俺の支配下にある。つまり、俺に攻撃すれば俺が身体に受けたダメージの分だけ、同じようにあいつらにもダメージが加わるってことだ。下手に俺に攻撃すれば、お前らの友達は辛い思いをしちまうってわけよ」

あたしと黒子は息をのんだ。
もしこいつの能力が本当だとすれば、あたしたちは下手に手出しができない。
大切な親友を傷つけてしまっては、元も子もない。

「さあどうするよ、お2人さんよお。それか、俺たちの出す要求をのめばこいつらを解放してやるよ。そうだな……そこの清白和女学院の女。こいつをここで俺たちに引き渡すってのはどうだ?」

周りの不良たちは挑発的な笑い声を上げた。
虫唾が走るその声に、私は右手を強く握りしめる。

「……ふざけんじゃないわよ」
「美琴ちゃん、落ち着いて」
「六花さん?」
「だめですの蒼南さん!そいつらの元に行っては……!」

六花さんは静かに感覚同調の男に近づいていく。
不良たちは小ばかにするように口笛を吹き、囃し立ててくる。

「ねえ、お願いだからその子たちを離してもらえない?」
「ああ?だから、お前がこっちにくれば離してやるって」
「今、私はこの子たちと楽しんでたところだから、できれば邪魔してほしくないんだけど」
「ああ?何言ってんだこいつ」
「交渉決裂、ね」
「六花さん、何してるんですか!離れてください!」
「ごめんね、美琴ちゃん。言うのが遅れて」

六花さんは私の方に向かって微笑むと、不良に向き直って強く言い放った。

「私も一応、能力者なの」

パキン。
一瞬にして不良たちの足元が氷で覆われる。
そして勢いよく、反対方向に立つ初春さんを捉える不良たちに向き直ったと同時に、また不良たちの足元が氷で覆われた。
不良たちの顔に不安の色を浮かぶ。

「冷たくないでしょう?わたし、どこから熱を奪うとか、そういった操作もできるの。だから人質の子達には大きな害はないと思うわ。と言ってもあなたのその状態じゃ、もうこの子たちは支配下にはないのだろうけど」

六花さんは氷で小さなナイフのようなものを作ると、先ほどの感覚同調の首元に当て、そっと囁いた。

「ねえ、どうする?私の絶対氷結(アイスルーラー)と、勝負する?」
 

驚くほど鮮やかに、大きな被害を起こすことなく事が終着した。
六花さんの能力は本当に惚れ惚れするほどに美しかった。