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「蒼南さん、すっごくかっこよかったです!」
「あんなに一瞬にして全員の足元を氷で固めてしまうなんて…わたし、感動しました!」
「あ、ありがとう」

先ほど人質にとられていたセーラー服の女の子たちに、私は詰め寄られていた。
ロングヘアーの女の子が佐天涙子ちゃん。
ショートヘア―の女の子が、初春飾ちゃん。
2人は目をキラキラさせながら、私の顔を覗き込んでいる。
5人で立ち寄ったコーヒーショップで今はブレイクタイムといったところだ。

「ひどいですよ、六花さん。最初っから能力者だって言ってくれればよかったのに」
「いや、本当は美琴ちゃんには言おうと思ってたんだけど、タイミングを逃しちゃって……」
「氷雪系の能力、ですよね?私初めて見ました!」
「うーん、ちょっと違う、かな?」
「え、じゃあどんな能力なんですか?」

涙子ちゃんは私の能力に興味があるようで、教えてください!と言わんばかりに目を輝かせてこちらを直視する。

「絶対氷結(アイスルーラー)なんていってるけど、元は温度操作系の能力なのよ。定温保存(サーマルハンド)って知らないかな?」
「それ、私の能力です!」
「やっぱり?なんとなくそんな気がしてた」

飾ちゃんは驚いたように私を見つめる。

「なんでわかったんですか?」
「だって、さっきから飲んでるココア、全然冷めてないもの。ずっと湯気がたったままじゃない?」
「あ」

黒子ちゃんは私をまじまじと見つめると、納得したようにうなずいた。

「聞いたことがありますの。清白和女学院の絶対氷結。またの名を、白ノ乙女(ホワイトメイデン)。さまざまな物質の温度を操作する能力で、特に温度を下げる方に特化している能力であると……。まさかそれが、蒼南さんのことでしたなんて」
「あはは、その噂、本当大げさよね」

私は思わず苦笑する。

「白ノ乙女なんて言ったって、大したことできないわ。私ができることなんて、こんなことぐらい」

私は小さな氷のティアラを作って見せた。
4人から感嘆の声がもれる。
その中でも一番反応のよかった美琴ちゃんの頭に、そっとティアラをのせた。

「わたしも、蒼南さんみたいになれるんでしょうか」
「初春ちゃん?」
「わたし、ずっと低能力者(レベル1)で……でも、わたしも蒼南さんみたいになりたいです」
「なれるよ。飾ちゃんなら」

氷の花を作って飾ちゃんの手の上にそっとのせる。

「私も最初は異能力者(レベル2)だったの。私のそばにいる人がとっても優秀で、どんどん力をつけちゃってね。ずっと置いてかれないように、その人の背中を追いかけたら、大能力者(レベル4)になってた。だから飾ちゃんもその思いがある限り、大丈夫だよ」

飾ちゃんはそっと嬉しそうに微笑んだ。
そんな少女の笑顔を見て、自分がレベル2だった時の思い出が、ふと脳裏に浮かんだ。

カフェオレは、すっかり冷え切ってしまってなんだか苦味が増しているような気がした。