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「おじゃましまーす!」
「いらっしゃーい!」
今日はいつもの4人と、六花さんの家に遊びに行くことになっていた。
私が六花さんのマンションまで3人を連れていく。
お土産は学びの園でしか出店していないケーキ屋で絶品と噂の、人気No1のプリンだ。
六花さんは私たちを笑顔で迎え入れる。
マンションは以前来た時と変わらず、とても綺麗に整頓されていた。
「わーすごい!広いですねえ!」
「これは、まずお決まりのガサ入れでもしなきゃかなあー!」
「え?」
そういうと、佐天さんは勢いよくありとあらゆる部屋のドアを開けていく。
あたしの寮に来た時もこんなことしてたっけ、なんて思い出しながら彼女の突拍子もない行動に唖然としていた。
「ちょ、ちょっと佐天さん!いきなりなにしてるんですか!」
「初春だって気になるでしょ!さあ、一緒にガサ入れするよ!」
「ええええ!!」
そんな2人の様子をみて六花さんは困ったように笑いながら、私と黒子をダイニングへ案内してくれた。
「なんかすみません……」
「いいのいいの。そんな大したものも置いてないし」
「でも、失礼にもほどがありますわ」
六花さんが淹れてくれた紅茶をすすると、すっと体に冷たい液体がのどを潤した。
季節は夏、六花さんの家はクーラーで適温に設定されている。
「みつけたー!アルバム!蒼南さんのアルバムみつけましたー!」
元気よく飛び込んでくる佐天さんに、それを後ろから焦ったようについてくる初春さん。
六花さんは穏やかに、よく見つけたねーなんて言っている。
5人でアルバムを見ていくと、そこには幼いころの六花さんがたくさん写されていた。
「わあー!かわいい!」
「蒼南さん、小さい時からすでにかわいかったんですね!」
「ははは……ありがとう」
小学校、中学校、さまざまな季節によってうつされた六花さんは楽しそうに微笑んでいる。
そして写真には必ず同じ人物が映りこんでいた。
「あれ、この人、さっきもいましたよね……?」
初春さんも気づいたようだ。
「ああ、これね。私の幼馴染なの」
「へえ、仲いいんですね」
隣に一緒に写っている男の子は、六花さんよりも小さく、写真はどれも仏頂面だ。
中学校ぐらいで同じぐらいか、六花さんよりもやっと大きく成長した。
「私よりも小さかったのに、今じゃすっかりぬかされちゃって……。男の子ってなんであんなに成長速度が速いんだろうね」
六花さんは優しそうな目で語る。
あ、きっとそうだ。
この間買い物してる時、一緒にいた人。
あの人が絶対に幼馴染の人だと。
「あれ、これ、蒼南さんの高校入学のときですか?」
「でも制服が違いますわね」
そこには清白和女学院の制服とは異なる、ブレザーの制服を纏った六花さんがいた。
「あ、うん。わたし、今の学校は転入して入ったから」
気まずそうに顔を俯かせる。
なんとなく聞いてはいけない、そんな気がした。
佐天さんも感じ取ったようで、フォローするように話題をすり替える。
「そういえば。もう一つ思ったんですけど……なんで男物の下着とか服があるんですか!?それに、ベッドはダブルベッド!蒼南さん、もしかして……彼氏と同棲中ですかあ!?」
佐天さんの直球ストレート。
六花さんは飲んでいた紅茶を吹き出しそうになるのを堪え、顔を真っ赤にしている。
六花さんの気まずそうな表情は笑顔に変わっていた。