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ある日を境に、美琴ちゃんと連絡が取れなくなった。
もしかしたら知ってしまったのかもしれない。
正義感の人一倍強い彼女のことだ。
学園都市の闇に、1人で立ち向かっているのではないか。
タイミングよく鳴り響いた携帯電話を取り出すと、そこには『白井黒子』の文字が浮かんでいた。

「もしもし?」
「ああ、蒼南さんですの?いきなりで悪いのですが、お姉様がそちらにお見えになっていませんか?」
「ううん、来てないけど……何かあった?」
「いえ、ちょっと帰りが遅れるとあったものですから……」

不安そうな黒子ちゃんの声。
電話を切って、私は確信した。
彼女は今、闇に直面している。
絶対能力進化計画――……美琴ちゃんのクローン2万体を第一位、一方通行(アクセラレータ)が殺していく計画に。

なぜ、わたしがそんな計画を知っているのか。
答えは簡単。わたしにも同じように、クローンが存在するからだ。
けれど、美琴ちゃんみたいに大量生産されているわけではない。
それこそ試作品として、ただ一体だけ製造されたクローンがいる。

彼女の名前は、処女作品(ファーストサンプル)。

私と美琴ちゃんが異なる点がただ1つあった。
美琴ちゃんは自分の知らないところで、勝手にDNAマップを乱用され非人道的な実験が行われている。
私は、私の了承を得た上で、DNAマップを提供した。

また思い出がフラッシュバックする。
まだ何も知らず、幸せだったあの日。

学園都市の闇は、私たちに突然襲いかかった。