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「樹形図の設計者(ツリーダイアグラム)の予測演算で垣根帝督。君が絶対能力者(Lv6)になれる可能性が0.01%の確率であることが判明した」
科学者たちは、俺を目の前にして言った。
俺が、レベル6になれるとはねえ。
「最初は第一位の一方通行しか到達できないという演算結果だった。だが、わたしたちはありとあらゆる可能性を考試し、そしてこの演算結果を導き出すことに成功した」
「そりゃあ、なんだってんだ?どんなことをすればいいんだ」
「何、第一位がやっていることより実に簡単だ。入ってきてくれたまえ」
科学者たちに連れてこられたのは、ほかでもないあいつだった。
「六花……」
「そう。君の幼馴染、蒼南六花君を殺してくれればいいんだ。だが、ただ殺すんじゃない。これから蒼南くんには特別のカリキュラムをこなしてもらう。一応、予測演算でこの子は学園都市で最も次のLv5になる可能性が高いともされている。極限まで能力を高めたうえで、君は彼女を殺す。そうすれば、君がレベル6へ到達するのだ」
何を言ってんだ、こいつら。
なんでお前がそこにいるんだよ。
なんで何も言わねえんだよ。
「ふざけてんじゃねえぞ……お前ら、なにいってんのかわかってんのか!第一こいつの意思は無視か?ああ?」
「そんなわけないだろう。ちゃんと事前に彼女には事情を全部説明してある。彼女の了承を得たうえで、この実験を提案しているのだ」
六花は俺と目を合わせようとせず、ずっと顔を俯かせている。
「どうだ、今すぐじゃなくていい。返事は明日までにくれれば、それでいいよ」
俺たちは何も言わず、帰路につく。
夏の夕暮れはまだ蒸し暑く、蝉が大きな声でけたたましく鳴いていた。
「六花。なんでこんなクソみたいな実験、承諾した」
「……」
「おい!答えろ!」
「……帝督が目指してるものになれるならそれはわたしの本望だもの」
笑顔を浮かべながら、六花は俺の手を掴んだ。
「帝督の力になれるなら、こんなにうれしいことなんてないよ」
「……ムカつく、お前」
「え?」
「さわんな、どっか行け」
俺は六花の手を振りほどく。
「……行かないよ」
だが六花はまた俺の手を掴んだ。
その手は微かに震えていた。
数日後、六花は清白和女学院へと転入した。
すべては俺のため。
アイツは、俺を中心に世界をまわしていた。
皮肉なものだ。
大切なものを守ろうとして上を目指したら、その大切なものを自分で壊さなければいけなくなった。
なぜ第一位になりたいのか――……。
俺は自問自答を繰り返す。