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「君が垣根くんに殺されれば、彼はあの不可能と言われた絶対能力者へ到達することができる。彼のために、どうか実験に協力してくれないか」

一瞬、目の前が真っ白になった。

研究計画書と書かれた書類をめくる。
そこに書かれていたのは、信じられないほど馬鹿げた内容。

『学園都市で最もLv5に近いとされる絶対氷結(アイスルーラー)の蒼南六花を殺害することで、未元物質の垣根帝督に精神的な影響を与えることができると推測される』
『確実性を上げるために、実験体である蒼南六花個々の能力も向上させる必要がある』
『実験が失敗しても、未元物質が一方通行を超える能力を獲得できることが期待される』

頭が痛くなった。
まるで鈍器で思いきり強く殴られたような衝撃が走る。

「……私が死ねば彼は上へ行ける、ということですか」
「ああ。今回の演算結果ではそうなった」

信じられない。
非現実的な出来事に、言葉に詰まる。

「逆に言えばこうとも言える。君の存在が、彼を第二位という位置に留めている。君が消滅することによって、彼は望んでいた第一位――……もしくはそれ以上の絶対能力者へとなれる道が開けるのだ」

私はずっと帝督のそばにいた。
彼がどれだけつらい思いをしてきたか、どんなに努力してきたかを見てきた。
そしてそれがどれだけ報われなかったかも。

「ずっと彼を支え、そばにいた君だからこそできる実験なんだ」

科学者の都合のいい言葉に心が乱される。

「一方通行にはそういう人物はいなかった。だからこそ、超電磁砲を128回殺害するなんていう無理な演算結果がでたんだ。それに比べれば、彼は幸せだよ。なにせ、辛い思いは一回ですむのだから」

やめて。

「それだけ彼の君への思いが強いんだと、樹形図の設計者にも捉えてもらえたんだ。すばらしい、感動的な話だと思うよ。君たちの絆はとても固く強い」

一筋の涙が、私の頬を伝う。


「彼のためだ。蒼南くん、協力してくれるかね?」


『六花!』


彼の声が、聞こえた気がした。