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「やられちゃった」
寝室から出てきた六花は俺のTシャツを纏っていた。
まるで1枚のワンピースのよう。
オーバーサイズのTシャツはなんだか妙にエロかった。
「全部部屋着洗濯したままだったよ。しかも干してなかったから帝督の借りちゃった。ごめんね?」
「別に」
「やっぱ忙しいからって洗濯は溜め込んじゃだめね。こまめにやらないからこうなるのねえ」
六花は台所で麦茶をグラスに注いで、俺の元に持ってくる。
「はい。帝督」
俺は黙ってグラスを受け取る。
隣に六花が座り、リモコンでテレビをつけた。
画面の中では女子アナウンサーが軽快に、学園都市の店をレクチャーしている。
「これ、この間のお店……潰れてる!?」
六花がほしいと言っていたスノードームの店が、花屋に姿を変えリニューアルオープンしていた。
隣で六花が大きく肩を落として項垂れている。
「はあー。買えばよかったなあ。もう買えないって思った途端、なんだかものすごくほしくなる……」
「……あっそ」
「あっそってなによ。久しぶりに惹かれた物だったのになあー」
しょうがないかあ。
六花は残念そうに眉を下げ、麦茶を口に含んだ。
髪はまだ乾いておらず、毛先から雫が零れ落ちそうになっている。
俺は思わず手を伸ばし、それを掬い上げる。
六花は目を丸くしてこちらを見た。
「帝督?」
「風邪ひくぞ。いいのか?」
「そうね。タオルとってくる。帝督も早く着替えて、一緒に晩御飯食べよ」
「……ああ」
六花に促され、一緒に寝室へと向かう。
先に歩く六花の後姿を見ていたら、我慢できなかった。
「て、帝督!?」
六花を抱きしめるように、後ろから手を回す。
そして、目の前のそっとにプレゼントを差し出した。
「クリスマスプレゼント」
「え?うそ……!」
六花は目を輝かせて、スノードームを受け取る。
「なんで?帝督、いつ買ったの?」
「いつのまにかポケットに入ってたんだよ」
「それじゃ万引きじゃない……」
しかも、クリスマスでもないし!
六花はまるで小さな子供の様に無邪気に笑っている。
その笑顔を見ていたら、自然と頬が緩んだ。