27
2人でベッドに腰かけてスノードームを眺めている。
雪の結晶はキラキラと反射し、眩く光っていた。
「これを見てて、昔のこと思い出した」
「昔?」
「お前が初めて能力を使って、物を作った時があったろ」
「ああ!雪の花を作った時ね!」
「その時のこと、思い出してた」
六花は懐かしそうに目を細めた。
「そうだね。確かにこういうのを作ったかも。私、すごくうれしくって帝督に自慢してたよね」
「ああ、あの時のお前がさ、なんか無性にかわいくて……」
何言ってんだ、俺。
思わず零してしまった本音はもう戻らない。
こいつとはずっとそばにいた幼馴染。
だからこそ、自分の思いなんて恥ずかしくて口にできなかった。
素直になれず、憎まれ口ばかりを叩いてきた。
恥ずかしさ、焦り。
俺は口元を覆って視線を外す。
「帝督……」
六花の声は少し震えていた。
思わず目をやると、瞳は潤み、頬がほんのりと赤く染まっている。
「ありがとう。このスノードームも、今の言葉も……お世辞でも嬉しかった」
「六花……」
「あれ、なんでだろ。ごめん、最近ちょっと涙腺ゆるいみたい……」
ぽろぽろ、と大粒の涙を落とす。
俺はいてもたってもいられなくて。
気が付いた時には、あいつの唇を塞いでいた。
「好きだ、六花」
「帝…督……」
ずっと伝えられなかった。
俺がお前への思いを強めれば強めるほど、あの忌々しい実験は、意味を増すんだ。
残酷な話だと思う。
けれどもう止めることは出来なかった。
六花の唇に触れた瞬間、俺を抑えこんでいた鎖はあっけなく砕け散った。