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ずっと好きだった。
でも言えなかった、
伝えてしまえば、悲しくなるのはわかっていたから。
あなたへの思いが強まれば強まるほど、あなたの運命は辛く、残酷なものになるって。
私は知っていたから。

「……六花」
「なあに、帝督」

2人でベッドに並んで横たわる。
帝督の腕の中で触れ合う肌と肌は、なんだか暖かくて。
先ほどのことを思い出したら恥ずかしくなって、私は彼の胸元に顔をうずめた。

「お前誘ってんの?」
「ちっ、ちがうよ!すごく……痛かったし」
「お前本当に初めてだったんだな」
「どういう意味よ!」

私が睨むと、彼は優しそうに微笑んだ。
その笑顔に胸が締め付けられる。
彼はゆっくりと、優しいキスをしてくれた。

「まあ、初めてじゃなかったら怒り狂ってたわ」
「ふふ。私は初めては全部、帝督にあげてばっかりよ」
「へえ。そりゃ、どうも」
「そういう帝督は、どうなのよ」
「……」
「こら、黙秘禁止」
「秘密な、秘密」

私たちは手を握り合い、幸せな時を噛みしめる。
ふと目に入ったスノードームの中では、キラキラと銀色の結晶がゆっくりと舞い落ちている。

「……このまま、ずっと一緒にいたいな」

私のむなしい呟きを聞いて、帝督は抱きしめる力を強めた。
私たちは知っているのだ。
この幸せは、永遠に続くものではないと。
束の間の幸せであることを。

でも、都合のいい私は願ってしまう。
どうかこの時間ができるだけ長く続きますように。
そして、彼がずっと笑顔でいられる様な。
そんな結末を、迎えられますように、と。

神様なんて、非科学的な淡い幻想に頼ってしまいたくなるほど、私は弱りきっていた。