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飛び込んだ警備員(アンチスキル)と思われる緑のジャージの先生が帝督によって刺された。
私の好きな人が、色々な人を傷つけている。
信じたくない、信じられない光景を受け止められず、ただ呆然とする事しか出来なかった。
帝督を突き動かしているものは、なんなのだろう。
彼はとても純粋に上を目指しただけだった。
私を守ろうと、強くなろうとしてくれた。
そんな彼を私は支えたくて、彼の望みは私の希望となった。
「……ねえ、帝督、やめて」
これ以上、彼を苦しめないでください。
彼は十分戦いました。
それでも足りないというのなら、今度こそ、私が。
「帝督……!」
私がその苦しみを、背負うから。
「帝督!!!」
気づけば体が動いていた。
暴走した一方通行の攻撃を受け、うなだれている帝督をかばうように飛び込んだ。
「いやああああああああ!!!!!」
私は無我夢中で一方通行に対抗する。
瞬時に創り上げた巨大な槌と鋭利な大量の槍を一方通行に目がけて振り落とす。
動きを止めるように両手足を氷結する。
間を隔てるように、大きな盾で間合いを必死に作った。
アスファルトに力なく項垂れる帝督を私は無我夢中で抱きしめる。
「帝督、お願い、死なないで……。帝督……!」
泣きながら叫ぶ私に、答える帝督の声は聞こえない。
凄まじい轟音と共に私の作った盾は無残にも呆気なく破壊された。
盾を貫いた黒い翼はそのまま私の足や腹に容赦なく突き刺さる。
「……なんであんたなんかがいるのよ」
あなたがいたから帝督はずっと第2位という格付けに苦しめられた。
「なんで、私たちだったのよ……」
ただ2人一緒に過ごしていた。
ただ、それだけなのに。
「答えなさいよ!!一方通行!!!!!」
私の叫びは届くことなくかき消される。
私の意識は、そこで途絶えた。