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目を覚ますと、見知らぬ白い天井が広がっていた。
右腕に施されている点滴。
体中にまかれた包帯。
朦朧とする意識の中、状況を理解した。

「やあ、目覚めたみたいだね」

カエルにそっくりな顔をした医者が、私を覗き込んでいる。

「君は無茶をしたね。普通なら死んでいたよ。僕がいなければ、ね」

モニターされる私の心拍数を刻む音が耳に響いた。
ああ、生かされてしまった。
規則正しく鳴る電子音を聞いて、そう思った。
壁に掛けられた血まみれの制服をみると、自然と涙が溢れ出た。

「あの男の子ね。時間がかかるだろう。次、君に会えるようになるまではね」

あの男の子。
医者の言葉に思わず目を見開いた。
帝督のことだ。
帝督も病院に運ばれたんだ。
帝王は今、ここにいるんだ。

「死んではいないよ。だが、前のように彼に会えるようになるとは申し訳ないが言い切れない。君が彼を信じる信じないかは、また別の話だけどね」

医者は曖昧な説明をして、部屋を去って行く。
私はもう一度、横目で制服を見つめた。

「帝…督……」

首元の赤い跡は、大きな傷によって消されていた。